「波」誌2024年3月号の作品より
「山日和」より 三月や大地の息吹生き生きと 山田 貴世
「春気配」より 縮み行くわが影法師日脚伸ぶ 西室 登
「妣の雛」より 朧夜の幻視や鯰大あばれ 管山 宏子
潮集同人より8句
冬満月酔うたふりして君の腕 本郷 秀子
年頭の挨拶に次ぐ地震のこと 中野 淑子
戦止まぬ彼方の空や初明かり 田邉 幸子
腑に落ちぬ話ばかりや海鼠噛む 稲吉 豊
湖の岸ふちどる草へ生ふ氷柱 田中美穂子
男等よ新橋駅前時雨をり 伊藤美也子
冬麗の谷中寺町ピンヒール 野口 尚子
竹林の笹子比丘尼を呼びをるよ 山田せつ子
冨山撮影
灘集同人より11句
初富士や始発電車の一輛目 中島 敦
青空や今朝の初富士日本一 石渡 道子
雲版の音甲高く寒に入る 今野 勝正
冬の月夜会帰りに猫に会ひ 今井美恵子
初日影廃炉の群を照らしけり 菅井 亮太
牡蠣を食むつるりと海を引き寄せて 井上美沙子
止めどなく雪とめどなく奥信濃 小山 清光
すり寄り来「タマ」の御慶を受け申す 菊地ゆき子
もう一度土を被せて春を待つ 澤村いづみ
心地好き足裏よ私湯たんぽ派 田原梨絵子
冬夕焼しづかにものを考へる 加藤 静子
霧野萬地郎撮影:アイルランドの風景(キルケニー城の裏庭 と ウィスキー工場にて)
波集より12句
虎落笛湯呑は父の手に深く 大谷みどり
地吹雪の底知れぬ音去るを待つ 當摩さとこ
やわらかな冬日賜りわが齢 秦野 方利
持っとけと大根漬は父の味 村田 和子
地震国まさか元日選ぶとは 吉川 知子
山眠る吾も昭和の遺物なり 川島 隆
七草は二草のみや粥の椀 杉下 赫子
冬夕焼染めらるるまま立ち尽くす 松岡美由紀
平和なる国に生かされ十二月 山崎 美紀
洗ふ水のむ水運ぶ能登は雪 本城 清
ギブスにはギブスの歩調春隣 鈴木 絹子
夫と喧嘩三日引き摺るすきま風 片桐眞知子
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