10月号 波編集後記

この七月にスペースシャトルは最後の任務を果たして帰還し、三十年の歴史は幕を閉じました。135回の打ち上げの中で、最も印象的だったのは、1986年に起きたチャレンジャー号の爆発事故です。フロリダの巨大な打ち上げ基地をバスで巡って発射間際の実物を見学したばかりで、興味深くこの打ち上げ実況をシカゴで見守っていました。発射直後のスペースシャトルの機体がテレビカメラにまだ写っている間の惨劇で、その後に繰り返し流すテレビ画面を信じられない気持で見ていました。あの時は、アメリカ全土が暗く悲しい気分に覆われていた事を思い出します。しかし、それらの困難を乗り越えて、人類に大きな成果と希望をもたらしたスペースシャトルの意義は計り知れません。今はロシアからのソユーズが使われていますが、次の宇宙開発の方向が期待されます。

新しい編集陣へ多くの励ましを頂きました。有難うございます。合併号の後、ひと月の間を置いての十月号です。お楽しみ下さい。

らいらく10月号 短文

<北国の木彫り>    

スウェーデンの土産屋には木彫りの赤い小さな馬が棚に並んでいる。発祥地に因んで、ダーラヘストと言うらしい。綺麗な模様の鞍と腹掛けを付けているが、ただそれだけで立ち居のままの素朴な形だ。長い冬の夜、森の小屋で削り作られた玩具だったが、やがて、ここを行き交う商人の土産として広まったとか。四百年も前からの話です。こけしも雪国の伝統工芸ですが、どこか通い合う憂いを含んでいる眼です。

句集「縞馬」:日本のサファリ<2011年(平成23年)―5>

結婚式のために久し振りにハワイへ旅をして、ゆるやかな風土と家族・親戚が集まる気軽さで極上の時間を過ごした。

らいらく11月号

(日本語教師)

海外へ出て日本語教師となる為の養成講座があります。そのコースの中には、「日本文化指導」の教科があって、歴史や気候の説明から、行事、スポーツ・芸能など多岐に亘り日本が解説されています。講座の一環として、句会の実践を依頼されました。事前に生徒の皆さんから投句された三十句を、二句ずつ互選してもらい、その選句理由を話してもらうやり方で行いました。初心者としては、素晴しい句と選の弁が多く、流石に日本語教師を目指す若者は頼もしく感じ、また、「句座は確かに日本文化だ」と改めて確信しました。

11月号:編集後記

海外で生活する事は可なりのストレスが付きまといます。言葉の不自由はもとより、現地の習慣や法律の違いに戸惑う事も多々あります。かつて、タンザニアに住んでいた時に、服装に関する規制が出ました。ミニスカートの流行っていた頃でしたが、政府はこれを下品な服装として禁じ、観光で訪れた外国人にまで、入国時にカンガ(腰巻)を買わせ、膝小僧を隠させました。理不尽だと思っても、従わざるを得ません。

それにつけても驚きは、大相撲の外国人力士達です。世界的に他に無い丁髷や褌で仕事をして、厳しい稽古を通して生活をしています。日本語も流暢にこなし、実に素晴しいと感心します。多くのファンが日本人力士を応援する中で、彼らのストレスにも思いを馳せます。不祥事が続き大相撲の試練の年でしたが、新大関、琴奨菊も加わり、日本伝統の大相撲の発展を期待しています。

ズーラシア動物園にて

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虚と実や池面の雲と赤トンボ

百歳は女九割ぬかご飯  塩害の痕あきらかに黄落期

野分雲さねさし相模の海烟る   鳥渡る雲の切れ目に蒼き富士

流星やハンマー投げのどすと落つ  ちんちろりん韋駄天男のフライング

新総理の号外が飛び処暑となる  一途跳ぶバッタ不具なり子を乗せて

台風来拳闘観たいと妻曰く  遊行寺へいろは坂とやつくつくし

月天心人魚の跳ねる地中海  露寒し半蔵墓前のワンカップ  軽トラを掠め飛び立つ稲雀

仰向けに離陸機見てる捨て案山子  駅前の闇膨らます椋鳥の声

アイパッドもてカラオケの生身魂  香煙や眼元涼しき菩薩像  どっと来る気仙沼から初秋刀魚