句集『縞馬』:日本のサファリ<2017年(平成29年)−6>
木守柿ぬれて耀く峡の村
前抱きの母は大きなマスクして
冬月や町の架線が交錯す
小春日や調子外れのクラリネット
ささやかな結婚記念日根深汁
派出所の地図に動かぬ冬の蝿
笹影の揺れるそば屋の丸障子
角巻や浮名を流す火照り顔
門のない名門早稲田冬休み
忖度の要らぬ世間へ名草枯る
忠犬の像へ師走の人の波
犬橇を御す少年の鞭捌き
自在鉤少し下して蟹雑炊 煙突に掠れ「朝日湯」空つ風
酔い覚めの風や師走の星座たち この地下に核シェルターのある枯野
陽の恵みたっぷり受けて冬木の芽 異人らも三本締めの忘年会
大仏の背窓を開ける寒さかな
異国語や冬は仏の耳が効く
大小の水子地蔵や冬紅葉
火事備え由井は紺屋の竹の籠
立冬や権現様の錆びし廟
流木の端に動かぬ冬カモメ
<宮ケ瀬ダム(上)と友人の盆栽師K氏宅の屋上(下)>
<←日本平>
吟行や句会も変わらず続けている。自分の意図とは異なる解釈をされたりして、それはそれで愉快な時間だ。仲間の視点や作句方法にも得心することも多い。
「波」の吟行は久能山東照宮、三保の松原へ、メセナ句会は鎌倉長谷への吟行に参加した。
11月の恒例のタンザニア会ではM船長さんが99歳の高齢のために欠席されたのは残念だった。船長さんは海軍入省、海上自衛隊の海将補、南極観測船の船長、ザンジバル海員養成学校設立、長江の上流までへの航路開発など、濃く長く、普通人の三倍位の人生体験をなされて、お話をする都度、大いに元気と勇気をいただいた。
12月には湘南高校OB会で2時間の講演を引き受け、その準備にPower Pointを自己学習した。
「旅(サファリ)と俳句」のタイトルで素人写真や動画も入れりして、このソフトの威力を活かせたと思う。湘南高校OBだけでなく、波の俳句の仲間も集まってもらえた。その報告のT氏がスマートに纏められ、有り難く感謝。また、私を推薦し、仲間の聴講者を集めたK氏にも感謝。そして、この日はK氏のアレンジで同窓会もあった。
トランプ大統領の刺激的な言動と北朝鮮の核ミサイルなどで戦争への緊張が高まった一年だった。また、エルサレムへアメリカ大使館を移す決定も新たな火種となった。その直前に現地を訪ねたことは何よりだった。
台湾への旅も良かったが、驚くような新鮮な発見が無かった。一見の旅では分からないほど、日本に近い文化なのだ。