波集から10句
揚花火闇だけ視てる人も居る 清島 俊雄
激動の昭和忘れじ草田男忌 渡辺 洋子
梅雨冷の片瀬江の島夜の静寂 長澤 義雄
竹皮を脱ぐや光をこぼしつつ 鈴木喜美子
あの窓も寝そびれたるや星月夜 朝日 操
逝く夏の漁火遠く動かざる 飯塚けいじ
百畳に満ちて諷教の声涼し 矢口 敬子
県境の嶺を跨ぎて虹の橋 伊藤真理子
秋思とは波の消し去る砂の城 布施なみ子
杯合せ余命を語る星月夜 秦野 方利
「波」誌2019年11月号の作品より
「冬に入る」より 楠の木の益荒男振りや冬に入る 山田 貴世
撮影:富山ゆたか 鵠沼海岸と遊行寺の昨年の大銀杏
潮集同人から8句
みづすまし遊んで水面なほ硬し 鈴木八洲彦
貝風鈴小さき貝も鳴り出せり 荒野 桂子
教よりも閑話好きなる盆の僧 吉村春風子
熔岩原の熔岩の炎熱天焦がす 松永弥三郎
残像は気まぐれをんな黒揚羽 稲吉 豊
山の音を掌に聞く岩清水 久保田葵美
ひいふうみ津軽海峡烏賊釣火 田中美穂子
タイガーバームさやけし父の万能薬 伊藤美也子
撮影:霧野萬地郎(スリランカ・ボロンナルワにて)
灘集同人より9句
刹那これ生涯なりや三尺寝 蜂谷 憲生
天牛のダリより勝る髭の形 山下 遊児
炎暑かなポポと二時告ぐ鳩時計 半田味加棒
白雨過ぐスウィングジャズの明るさに 田中 順子
立秋や父の遺品の隊名簿 白倉 靖子
八月や不戦を老いの声絞り 山田せつ子
海月浮く波打ち際といふ奈落 富山ゆたか
巣燕の口を右から数へをり 新坂 雅子
夜の闇に織りなす神秘鵜舟の灯 西室 登