波集から10句
向日葵の仁王立ちする亭午かな 開米 遊子
人の世の移ろふ様に七変化 橋本ふみ子
群生忌音の異なる滝ふたつ 信乃 美萩
夏至なれや折目正しく朝が来る 清島 俊雄
梅雨の路次煮付けの匂う漁師町 須田 久代
待つことが命のはじめ蟻地獄 相賀むさん
沖縄忌礎撫でる手深き皺 永尾 陽子
墨の香を生きる縁と暑き日も 太田 時子
初夕立君を待つ間のカフェテリア 村田 和子
一礼し日傘男子よ素通りす 蓬田 和子
撮影:富山ゆたか
「波」誌2019年10月号の作品より
「港横浜」より 秋うらら港横浜カフェテラス 山田 貴世
潮集同人から8句
海上花火五輪の火の粉散りばめぬ 八重樫弘志
流燈の残してゆきし涙雨 朝広 純子
軒燕期限限定わが家族 本郷 秀子
蠟菅の音のかすれや夜半の秋 霧野萬地郎
青胡桃手にす山河のにほひあり 濱口たかし
秋澄むやふつと空気の軽くなる 禿河とし子
首夏の街赤い靴履く漢どち 田邉 幸子
カウベルも聞こゆる小径カンパニュラ 阿部千恵子
撮影:霧野萬地郎(スリランカにて)
灘集同人より9句
ボサノバを刻む指先梅雨茶房 田中 順子
あぢさゐの手毬てんてん良寛来い 鎌田紀三男
解禁の鮎の光を釣りにけり 山下 遊児
一語消し涼しき文となりにけり 坂本 満子
青梅雨やどつぷり浸る無気力感 菊池 慶子
六月の風月堂の和菓子かな 石堂 陽子
ラヂオもテレビも昼寝の音である 鈴木 基之
天下など無縁でござる三尺寝 板坂 歩牛
白日傘傾ぐ水郷さつぱ舟 新井 里子