潮集同人から8句

稲の香の闇に仄めく故郷かな     朝広 純子  

そぞろ寒忘却曲線急降下       管山 宏子

朝採りの掌中に照る秋なすび     原口 海人 

明月や高層ビルの威丈高       中野 淑子

紅葉かつ散るシュールリアリズム    由田 欣一

乃木坂に明治の名残り棗の実      加茂 一行

葛の花その限らなき自己主張      石垣みち代

石榴裂けベトナム戦記蘇る       石井  眞 

撮影:富山ゆたか 

 撮影:霧野萬地郎(スリランカ・聖なる菩提樹へ向かう信者)

灘集同人より9句

阿夫利嶺の風が渋抜く柿たわわ    長野 保代

遠つ沖へ船すべりゆく秋の昼      遠山 典子

牧牛の秋風までも咀嚼せり      山下 遊児

傷秋の吾シュコシュコ空気入れ     山田せつ子

天仰ぐ被災畑の捨案山子        富山ゆたか 

鬼平を読むに適ふや夕時雨       塚本 虚舟

天高し淡海の器小さきこと       鈴木 基之

桐一葉意志持つやうに草の上     武田志摩子

花八つ手幼児のやうに母こくり     宇賀いせを

波集から10句

降り立てば稲の香だけの無人駅     長澤 義雄

かへるでの影やはらかや泰夫句碑    伊藤真理子  

紺青の色を忘れず牽牛花        堀野カズ子

芒原風の重たき火山灰の村       岩倉 未央

空蝉の甲冑琥珀色残し         中嶋  敦 

残されてひとりの家や姫林檎      坂本きみよ

顔拭ふごと丁寧に盆の墓        橋本ふみ子

秋深し街に賑わい戻り来ず       菅井 亮太


秋晴や土手の自転車空へ翔ぶ      酒向  昭

ことの外海馬健在秋日和        青谷 逸子

「波」誌2019年12月号の作品より

「風の喝采」より  柿落葉風の喝采鳴りやまず    山田 貴世


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