潮集同人から8句
梅雨茫茫かの山里の如何ならむ 中田多喜子
朱夏翳すDAFA牛耳る未来像 管山 宏子
工事夫の掌にはスマホの三尺寝 原口 海人
夕焼けの雲明日が見ゆる潦 中野 淑子
国憂ふ不遜を嗤ふ花ざくろ 由田 欣一
兜虫掴めば鉄の重さあり 加茂 一行
五月雨や弾痕鮮やぐ転害門 石垣みち代
郷愁は一粒でたる桑苺 石井 眞
撮影：霧野萬地郎（アラスカにて・正教会の聖職者）
「波」誌2019年8/9月号の作品より
撮影：富山ゆたか
「名残の萩」より 八月や水の地球を汚すまじ 山田 貴世
灘集同人より９句
白南風や干されて海女の命綱 坂本 満子
月上げて四葩にあらき息づかい 小山 清光
色変へし薔薇の名それはプレイボーイ 鴉田 愛子
尺蠖の愚図るかに時きざむかに 今野 勝正
憧れは「不良老年」緑立つ 筒井 洋子
カミングアウトに勇気持たれよ芙蓉の実 緒方 格子
昼顔の宙と交信してをりぬ 山下 遊児
星祭り空の何処かにゐる人と 加藤 静子
森若葉洩るるひかりは水溶性 富山ゆたか
波集から１０句
境内は青水無月の日の斑なす 信乃 美萩
むらさきの空へとつづくラベンダー 長澤 義雄
梅雨晴間すずめの映る猫の目よ 三浦 修子
先導の木遣朗朗夏の空 三宅 善夫
漢とは「高倉健」よ夏盛り 酒向 昭
薔薇垣に降りしきる雨ショパン聴く 西 かな子
老いてこそ装へと決め花菖蒲 外川 詔子
茶臼山夏草覆うふ陣の跡 坂本 弘道
言い争いだんまり決めてらっきょ剥く 小林 昭子
若葉風後ろ足から座る象 清島 俊雄