「波」誌2018年7号の作品より
「竹も時なり」より はらはらり竹も時なり葉を落とす 山田 貴世
「大地の力」より 万緑へ入りゆく男影持たず 八重樫弘志
「水鏡」より 青鷺の一羽の乱す水鏡 朝広 純子
波集から8句
一湾に一帆船を入れて夏 山田ツトム
夏来たる大桟橋に巨船泊つ 秦野 方利
花林檎少年既に髪白し 菅井 亮太
僧職も遊女も単衣渡し舟 塚本 虚舟
青梅やシングルマザー強くあれ 緒方 格子
当り来ぬ浮子を波間の目借時 中嶋 敦
アマリリス四方に自我を張りにけり 長野 たけ
ほろ酔いの影も引き連れ春惜しむ 村田 和子
潮集同人から7句
藤房の夜目にも長くある不思議 鈴木八洲彦
薔薇園の明るさ方位失へり 小泉 恭子
亀鳴くやこの身ひと山百文ぞ 本郷 秀子
朧夜のシュールな時刻また歪む 管山 宏子
朱線みな知恵の泉や書を曝す 吉村春風子
首夏の空揺るがす爆音火山噴く 松永弥三郎
黄塵万丈円周率の厘の先 稲吉 豊
ネボ山から見る約束の地(井の頭公園とは全く違う瓦礫の土地)
撮影:霧野萬地郎
撮影:富山ゆたか(井の頭の池にて)
灘集同人より9句
存分に生きて未完の四月果つ 田中美穂子
繰り返し岬卯波を突き刺して 妹川 稔
鯉のぼり尾鰭に母の手縫い跡 山下 遊児
頬杖をつけば生まるる春愁 寺田 篤弘
終の地は水うまき郷若葉風 長野 保代
落椿色即是空あるがまま 蜂谷 憲生
川音の生々流転余花の花 木嶋 玲子
ふらここやひっそり老いを受け止めり 筒井 洋子
鯉のぼり数えてうれし故郷の空 西室 登