「波」誌2018年8/9号の作品より
「野分晴」より 大いなる野分晴なり城の跡 山田 貴世
「紫陽花忌」より 夢に積むケルン一基や巣立鳥 八重樫弘志
「夏座敷」より 一僧を待つ設への夏座敷 朝広 純子
撮影:富山ゆたか(鵠沼海岸・新宿にて)
波集から9句
益荒男の裸の手繰る地曳網 村田黙己春
一息をついて噴水折り返す 長澤 義雄
弾みつつ水切る石や夏来たる 坂本きみよ
矢車のかきまわしたり空の青 酒向 昭
ゆらぎ来る音もみどりの葉擦れかな 清島 俊雄
花心より光放てり黒牡丹 橋本ふみ子
麦秋や膝のきしみもリズミカル 五島 亨
アリババの戸の印とも蛞蝓這ふ 岩倉 未央
翡翠の声して水面穴あきぬ 近藤 拓
潮集同人から7句
生と死と決まる一秒夏の雲 中田多喜子
少年の手から少女へ青蛙 荒野 桂子
砲門は海へカリブの積乱雲 霧野萬地郎
備長の縦の断面炭風鈴 太田 翠
噴水は同じ高さに疲れをり 濱口たかし
青梅や母にも恋のものがたり 由田 欣一
若竹の若き盛りの身の撓り 加茂 一行
撮影:霧野萬地郎(ペトラ遺跡にて)
灘集同人より9句
母のなかに今も長男敗戦日 宇賀いせを
カレー濃く匂ふ早稲田の昼薄暮 外岡六太郎
落ち梅を踏めばぱりっと割れて晴 新坂 雅子
仏法僧八十路歩むは下山めく 松永 順子
職人のかくも涼しき竹細工 鈴木 基之
噴水のあわいを風の通りけり 長野 保代
青水無月洞抱く朴の大樹かな 野口 尚子
たたみ皺伸ばしてかぶる夏帽子 寺田 篤弘
ただ在るは瓦礫の大地秋の風 杉本 正明