「波」誌2018年6号の作品より

「雨意の風」より  追分や方位狂わす時鳥           山田 貴世

「矛の韻き」より  みちのくの風鈴矛の韻きあり        八重樫弘志

「惜春」より    音のなき故郷の真昼水すまし        朝広 純子

灘集同人より9句

春思とは乗りそこねたる電車の灯  今井美恵子

菜の花や青春細胞溢れ来る     蜂谷 憲生

鯉の口出でてふたたび花筏     高橋きよ子

虚子忌なほ爪の先程闘志抱く    新井 里子

父祖の地を洗ふ雨なりお彼岸会   君島 京子 

さくらさくら甲斐なきときはセレナーデ  富山ゆたか

子育ての吐息も少ししやんぼん玉   山田せつ子

今生れし初蝶見てよりの鼓動    武田志摩子

踏青や辿り着いたり青い過去    菊池 慶子

波集から8句

散るさくら特攻兵は孫の歳     五島  亨

飛花一片たまさか乱る鼓笛隊     中嶋  敦 

さくらさくらさくらや被曝地の無音  緒方 格子 

陽炎や高層ビルの迫りくる      朝日  操

それぞれに悩みあれども桜咲く   遠藤 章子  

ビル街に血の通い出す春曙      関  美晴

証書手に古き性をも卒業す      梅木くに子

道場の的の白さも清和かな     粋 狂 子     

潮集同人から7句

義経の越えし山あり草萌ゆる     庄司りつこ

底見えぬ氷河の底の真青かな    霧野萬地郎

父島の浜にさゆらぐ半仙戯      原口 海人 

不揃ひはこの上もなし牛蛙      久保田葵美

嫁女来る猫とピアノと薫風と     中野 淑子

群れ中に足環の鳩や聖五月      禿河とし子

春なれや庭うごかして土竜どち     田邉 幸子

上は芹ケ谷公園、下は日比谷公園  撮影:富山ゆたか

静かなエルサレムにて  撮影:霧野萬地郎

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