「波」誌2018年5号の作品より
撮影:富山ゆたか
パレスチナ自治区から見たイスラエルとの分離壁
撮影:霧野萬地郎
「若葉の夜」より 山裾の大いなる闇花は葉に 山田 貴世
「遍路みち」より 妻の手を曳くまぼろしの遍路みち 八重樫弘志
「陽炎」より 積まれたる汚染土なべて陽炎へる 朝広 純子
波集から8句
単線の終着駅や麦の秋 塚本 虚舟
最後まで花であろうとした椿 帆川 透
雛の前女おのづと女めく 伊藤真理子
ヨレヨレのトレンチのまま卒業す 春本 幸洋
揚雲雀見しを明日への気概とす 緒方 格子
囀や吹かれ吹かれて鉋屑 小泉 潤
今此処に斯うして吾あり青き踏む 清島 俊雄
放たれて卒業の空真青なり 酒向 昭
潮集同人から7句
生涯の師の国訛あたたかし 中田多喜子
雪原を雑木林が行進す 本郷 秀子
囀りのメルヘン街道徒日和 荒野 桂子
まぼろしの駱駝を飼つて冬砂漠 濱口たかし
平成もあとしばらくや内裏雛 由田 欣一
東京は直線ばかり鳥曇に 加茂 一行
春昼やどんみり疼く親不知 稲吉 豊
灘集同人より9句
豪雪も自慢のひとつと笑ふ杣 工藤 稲邨
望遠鏡さかさに見ても春近し 寺田 篤弘
バルコニー戯曲のやうに春の猫 阿部千穂子
海へ来て光はすでに春のもの 山下 遊児
しばらくは花のあたりの暮れ残る 大場 ヤエ
炉を囲み訛るマタギの武勇伝 板坂 歩牛
卒業は解放スカートひるがえし 脇 美代子
兜太も父も下帯世代春逝けり 野口 尚子
反骨の秩父の巨人梅真白 鈴木 基之