「波」誌2018年1月号の作品より
潮集同人から7句
紅葉冷つのる夜さりの湖の音 小泉 恭子
露草のひとつ火渡り跡にかな 庄司りつこ
虚揺れの皀莢の実よ風となれ 管山 宏子
秋天に見えし日の丸成田ゆき 太田 翠
かごつま弁飛び交ふ芝居秋うらら 松永弥三郎
由比の町ぶらり本陣しぐれ傘 中野 淑子
神留守や矢鱈目につく葵紋 稲吉 豊
(ルムテク僧院の六道輪廻図 撮影:霧野萬地郎)
「瑞の青空」より 小吉のみくじも嬉し七日粥 山田 貴世
「天の鶴」より 天の鶴地の鶴声を交わしけり 八重樫弘志
「望郷」より 望郷や干大根の匂ふ闇 朝広 純子
撮影:富山ゆたか
波集から8句
蘆原の蘆より低き手こぎ舟 杉下 赫子
近寄れる牡鹿の鼻の濡れてをり 小泉 潤子
他人事のやうに老いたり霧襖 緒方 格子
滝涸るる雲上竜の潜みをり 塚本 虚舟
初しぐれ鎌倉茶房の焼むすび 和田 晴子
冬囲女庭師の諸結び 中嶋 敦
村上げて祝ふ婚礼天高し 坂部 ヨミ
柿晴れと呼びたき今日の光かな 開米 遊子
灘集同人より9句
雁の声一湾淡く昏れかかる 富山ゆたか
小春日やちやつきり節のづらづら弁 木嶋 玲子
露の世と言ふも面白おかしかな 西室 登
大政小政森の石松小六月 伊藤美也子
初時雨由井の紺屋に残る甕 野口 尚子
小春凪光たゆたふ駿河湾 三澤カツコ
以上でも以下でもなき身吾亦紅 脇 美代子
先のこと弥陀に委ねて小六月 小田切松枝
冬に入る立ち止まつてなど居られない 松永 順子