潮集同人から7句

礎石のみ光り一乗谷の秋       荒野 桂子

サンタ御すいつもの馬車のアーミッシュ 霧野萬地郎

手庇の男汀に夏惜しむ        原口 海人 

川風に遊び呆ける花芒        久保田葵美

あたためしミルクの甘さ小鳥来る   禿河とし子

鳴子田の人恋ふ色となりてをり     田邉 幸子

逆縁も順縁もあり雁きたる       加茂 一行

(ヒマラヤ・カンチェンジュンガ 撮影:霧野萬地郎)

撮影:富山ゆたか

「波」誌12月号の作品より

「息白し」より   究極は瞑目の色返り花            倉橋 羊村

「十二月」より   この道は行ってはならじ開戦忌        山田 貴世

「霧の熔岩」より  我が方位なし霧の熔岩霧の熔岩        八重樫弘志

「晩秋」より    晩秋の静寂に傾ぐ弥勒仏           朝広 純子

波集から8句

消せる灯は消して良夜を我がものに 緒方 格子

ちちろ鳴く昨夜と同じこの時刻   酒向  昭

新秋と思ふ畳の触れ心地      髙橋きよ子

雁渡るV字の角度広げつつ     星野 朋子

一つ家に死者と生者や夜長し    伊藤真理子  

さつまいも戰忘れぬために買ふ   加藤 澄子

紺碧の空に富士濃し赤蜻蛉     長澤 義雄

子と墓参入りたるわれのふとよぎり  清島 俊雄

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灘集同人より9句

人生に余りなどなし小鳥来る    鈴木 基之

心ひくもののいつしか残る虫     長野 保代

傾けば傾き返す神輿かな      山下 遊児

ミサイルや弥生の裔は稲を刈り    外岡六太郎

遺跡とは風棲む処草の絮      今井美恵子 

不器用な漢のはずや祭笛      武田志摩子

人逝けり底紅果つるやうにゆく    石堂 陽子

赤とんぼもわれもこの世の過客かな 蜂谷 憲生

秋夕焼相似形なる影連れて     石垣みち代