潮集同人から7句

瀬の瀬に歩とどむれば降る病葉よ   鈴木八洲彦

盆夕餉声大きいもの論制す      中田多喜子

No more war 夕青空に虹二重    本郷 秀子 

木陰にてシェスタの美猫うすめ目あけ 太田  翠

地獄絵の女血を吐く土用干し     濱口たかし

武器なりし竹槍の先赤とんぼ      中野 淑子

八月や広辞苑になきララ物資     由田 欣一

「波」誌11月号の作品より

「冬欅」より    疾風怒濤の晩年もよし冬欅          倉橋 羊村

「小六月」より   黒門に雲の居坐る小六月           山田 貴世

「小鳥来る」より  小鳥来る生涯学習半ばにて          八重樫弘志

「初時雨」より   神無月九条談義賑賑し            朝広 純子

波集から8句

身にまとう滅びの光秋螢      伊藤 民雄

病院は嫌だ最後は夏座敷      緒方 格子

屋根裏の父のにほいの籠枕     小泉  潤

福耳の男しんがり荒神輿      伊藤真理子

炎天へ踏み出す背筋伸ばしけり   坂本 満子 

巴里祭や鎖骨にふるるネックレス   亀倉美知子

二上山の金の夕映え夏燕      池田景伊子

色あせし女児の片靴夏の土手    清島 俊雄

「波」のホームページ・トップへ       前月へ      次の月へ

デリー郊外の野生の孔雀(撮影:霧野萬地郎)

灘集同人より9句

夾竹桃の真白の重み爆心地     大場 ヤエ

カクテルの氷泣くなり八月忌     鈴木 基之

時空よりころげ落ちたる昼寝覚    寺田 篤弘

まなざしを虚空へ向けて祭笛     山下 遊児

眼前の海はわが庭波涼し      西室  登 

骨壺のひと世の重み秋暑し      田中美穂子

ひろしま忌みな哀しみの影を引き   澤  暁子

放牧の馬の嘶き夏の雲       石渡 道子

文明に反旗を掲げぼろ団扇     板坂 歩牛

撮影:富山ゆたか