「波」誌10月号の作品より

灘集同人より9句

風高く吹いてゐるなり桐の花     武田志摩子

大向日葵これぞゴッホの面魂     蜂谷 憲生

七月や老人後期反抗期       鈴木 基之

告白の時に吃音柿の花        稲吉  豊

ルビー婚ですサクランボです召し上がれ  田中順子 

少年も戦死の摩文仁大南風      外岡六太郎

人間に尻尾の記憶梅雨明ける     伊藤美也子

サーファーや沖を見返り一礼す    富山ゆたか

軽鳧の子や自由てふ水脈ひきはじむ  筒井 洋子

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潮集同人から7句

黙祷の後先ばさと黒揚羽       小泉 恭子

九輪草蔵王の風に育まれ       庄司りつこ

海昏て波頭にもゆる夜光虫      管山 宏子 

冬近しロシアンティーの香り濃し    霧野萬地郎

落慶の寺に手荒や日雷        吉村春風子

日焼して吾子は離島の一教師      松永弥三郎

夏終はる訪ふべきひとを訪はずして   加茂 一行

「栗拾ふ」より   どう見てもうしろ姿の雁来紅         倉橋 羊村

「草の絮」より   あけくれの風の意のまま草の絮        山田 貴世

「山の日」より   滝落ちて火を噴く如し吾が前に        八重樫弘志

「夏霧」より    夏霧を巻きて孤高の榧大樹          朝広 純子

撮影:富山ゆたか

空が冴えないカムチャツカ・アヴァチャ山(撮影:霧野萬地郎)

波集から8句

水打たな更地となりし生家跡    緒方 格子

家系図に似通ふ名前鉄線花     伊藤真理子

骨太の漢が二人心太        関根 曳月

身寄りなき墓を漂ふ梅雨の蝶    信乃 美萩

人智超え轟く雷雨街をのむ     三浦 修子 

緋目高の口笛ふけば浮きにけり   山本 一夫

万緑や川底までも染めあげて    青谷 逸子

下闇の九十九折なす天城越え    長澤 義雄