「波」誌2018年2月号の作品より

波集から8句

術創のしるき父の背虎落笛       伊藤真理子

冬ぬくし鏡の中に父を見し       酒向  昭

焼藷や駅北口の夕間暮        中嶋  敦

人の世は小さきことと山眠る      菅井 亮太

冬桜腹のすわりし百寿かな       山本 一美

笹子鳴く薬師の杜の大銀杏      長澤 義雄

亡き父の今爛漫の金木犀       塚越やす子

詭弁多弁聞くでもなしに懐手      春本 幸洋

潮集同人から7句

旅にあらば牡蠣割女には言問ふな   鈴木八洲彦

大枯野問答無用の孤独感       中田多喜子

冬桜片恋なれどせぬよりは      本郷 秀子 

一献は古翁に捧ぐ年忘        荒野 桂子

山茶花のいろはにほへと垣根咲き   濱口たかし

着膨れてわれ陸封の魚となり      由田 欣一

かいつぶり世のざわめきにまた潜る  加茂 一行

(ダージリンの茶摘 撮影:霧野萬地郎)

「名残雪」より   名残雪僧のきれいな箸づかい        山田 貴世

「雪後の鷺」より  雪後の鷺己が胸より嘴引き出す        八重樫弘志

「冬日和」より   冬帽子振りむかぬまま遠ざかる       朝広 純子

撮影:富山ゆたか

灘集同人より9句

遺影にも沁みる伽羅の香白障子    溜谷 哲子

日の障子閉じて俄に耳聡き      今野 勝正

幣子古りし神木にして落葉せり     伊藤美也子

ぎしぎしと冬日を回す水車かな    山下 遊児

折れ易き性か齢か枯蓮        鈴木 基之 

ペチカ焚かむ吾ら偉丈夫の門出     山田せつ子

枯蓮に青き空あり明日あり       富山ゆたか

オリオンに射貫かれて冬きたりけり   鈴木朱鷺女

青虫の青そのままに凍てにけり     宮本 恭子

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