リスボンのフランス式庭園(撮影:霧野萬地郎)

灘集同人より9句

「知足」てふ父の口癖蜆汁      新井 里子

春日受けのたりともせず逗子の海   妹川  稔

存分に女が使ふ春の水        山下 遊児

辛夷咲き甲斐の山々軽くなる     石井  眞

野遊びや割って輝く塩むすび     脇 美代子

山の辺の道の起伏を花明り      飯野 深草

囀りや心の弾む日の来たる      寺田 篤弘

手を触れて心も触れてさくらかな   長野 保代

豊後梅薄紅梅の雨しづく       石堂 陽子

「波」誌6月号の作品より

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潮集同人から7句

つばめ自在鉄砲はざま槍挾間     小泉 恭子

さ揺らぎの先にある黙花冷ゆる    管山 宏子

まくなぎや魔女を晒した鉄の籠    霧野萬地郎 

釣具屋の魚拓鮮し島の春       原口 海人 

蜆なくごと天の邪鬼泣く夜かな    久保田葵美

朧夜にインターネットのひとり旅     吉村春風子

托生の身に活入れし接木かな      加茂 一行

撮影:富山ゆたか

「黒揚羽」より   水着着て神畏れざる声を挙ぐ        倉橋 羊村

「朴一花」より   夏鶯空の機嫌の良き日なり         山田 貴世

「大地の力」より  青き踏む大地の力確かめつ         八重樫弘志

「惜春」より    惜春や抱けば幹の水谺           朝広 純子

波集から8句

畝二本起こし終えれば春の月    春本 幸洋

貴種流離譚に恋あり春の潮     緒方 格子

抜け道を来て春泥に阻まるる    坂本 満子

つくづくと掌の文見つむ日永かな  伊藤真理子

草萌や蹠に土の弾みあり      志鎌恵美子 

白魚に血の気といふはなかりけり  髙橋きよ子

鞦韆や幼馴染と競漕す       上野 和行

盃にしばし落花を留めけり     伊藤 民雄