灘集同人より9句

雲喰うた貌してキリン春めけり    稲吉  豊

ガラスペン小樽に買うて多喜二の忌  阿部 竹子

樹木医となりて芽吹きの音聴かむ   山下 遊児

水仙の美学通してすくつと佇つ    澤 暁子

魚を釣り無聊をつりて日永かな    鎌田紀三男

摩耶夫人の薬袋紅き涅槃絵図     野口 尚子

凡夫には凡の心や蕗のたう      鈴木 基之

風呂敷の結び目弛ぶ茂吉の忌    遠山 典子

三月十日はてなくつづく半減期   澤村いづみ

「波」誌5月号の作品より

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リンドバーグより先にポルトガルからブラジルへ大西洋横断した水上機
           (撮影:霧野萬地郎)

潮集同人から7句

捨舟の竜骨まぶし猫柳        鈴木八洲彦

涅槃西風一つ増えたる泣きぼくろ   本郷 秀子

大浪も逆波も越え桜鯛        荒野 桂子 

かく咲いて星のやうなる犬ふぐり   濱口たかし 

婚記念の老幹癒す梅真白      松永弥三郎

生まれたるしゃぼん玉にも運・不運   禿河とし子

恋人が出来たと告ぐ子春麗ら     田邉 幸子

「初蟬」より    初蟬かと呟きゐるひとり旅         倉橋 羊村

「風薫る」より   老鶯に全き日和賜われり          山田 貴世

「雪こだま」より  耶馬台国を呼ばへば応と雪こだま      八重樫弘志

「風光る」より   鳥を呼ぶ高き口笛風光る          朝広 純子

撮影:富山ゆたか

波集から8句

雄叫びの山は火の滝春の月     池田景以子

雛の間や四隅に残る深き闇     志鎌恵美子

恋絵馬に朱の結び紐椿東風     髙橋きよ子

春寒料峭東北沿線朽ち果てて    菅井 亮太

紅淡き湖北の仏春浅し        春本 幸洋 

長編の入り口のまま春眠し     片岡 和子

風来ては色足して行く紫木蓮     加藤 澄子

梅林の眼下澪引くイージス艦    中嶋  敦