「波」誌4月号の作品より
灘集同人より9句
月さえ手て仰ぎ見詰むや老いと死と 蜂谷 憲生
雪掻きや他人の主人を助つ人に 澤 暁子
立春大吉ドーナツの輪の黄金色 稲吉 豊
荒行の成りて蓬髪梅ふふむ 野口 尚子
書を捨てぬ八十路の愚直実燈下 西室 登
笑めば笑む赤子は鏡春日影 山田せつ子
早春や満願の僧の座り胼胝 澤村いづみ
千鳥ヶ淵風が舵とる花筏 吉住 孝子
変はる世に変はらぬこの身ちやんちやんこ 鎌田紀三男
潮集同人から7句
こころざし織る寒染の紅流し 庄司りつこ
料峭や微微と罅入る楽茶碗 管山 宏子
きんかんの鈴なり寡婦の勝手口 太田 翠
日の恵み風の励まし青き踏む 吉村春風子
萌やしにも立ち上がる性日脚伸ぶ 中野 淑子
多喜二忌やアカになるなと考の文 由田 欣一
花桃や月山白き壁たてて 加茂 一行
「山霞む」より 童女とて愁ひ顔よき濃山吹 倉橋 羊村
「花巡り」より 埒もなき事や石蹴り春終る 山田 貴世
「雪の焚火」より 雪の焚火浄らに高し妻癒えよ 八重樫弘志
「山笑ふ」より 島守の遠目差しに山笑ふ 朝広 純子
リスボンの花屋(撮影:霧野萬地郎)
撮影:富山ゆたか
波集から9句
春雷や紫紺に暮るる伯耆富士 長澤 義雄
為てやがてさるる介護や炭を継ぐ 緒方 格子
朝の日や百態尽くし枯蓮田 坂本 満子
名山も無名の山も笑ふなり 塚本 虚舟
敬礼の肘やや高く出初式 中島 敦
寛解のいまを頼りに毛糸編む 信乃 美萩
串抜かれ目刺寄辺を失へり 髙橋きよ子
転ぶなと己戒め寒の入り 星野 朋子
経緯は聞かず別れし冬の駅 和田 晴子