「波」誌2024年5月号の作品より


「新樹光」より          てんと虫一つ付きたる童子墓         山田 貴世

「初夏の景」より         美しや遡上鍛へし鮎の形           西室  登

「夏立ちぬ」より          肩までの髪ばつさりと街薄暑          管山 宏子


潮集同人より8句

盆梅や陽を存分に自己主張             原口 海人    

高階に飼はれし猫の恋知らず             中野 淑子

急磴の残り百段山笑ふ                稲吉  豊

ショー終る巴里のミモザを家苞に          田中美穂子

さえずりを翻訳すれば相聞歌             山下 遊児

冴返る五体投地の二月堂               飯野 深草

川底に風の径あり水草生ふ              田中 順子

自愛せよ手書きの文のあたたかし          野口 尚子


  

                   冨山ゆたか撮影 

灘集同人より12句

茹でてなほ口割らぬ貝多喜二の忌           髙橋きよ子        

正論をかざして老いて冴返る                菅井 亮太 

片栗や古墳の丘に咲き継ぎて              岩倉 未央

啓蟄や蠢くものを胸に飼い                 渡辺 初子

風に落ち風無きに落ち椿かな               長野 保代

せせらぎも一つ加わる春の音               工藤 稲邨
                    
たんぽぽを踏まじと老いの杖力む             永井かほる

名残りとて二月の雪の重さかな               佐藤 栄子

草萌や千代にいのちを継ぐ力               田端 重彦

やる事のある幸せに気付く春                筒井 洋子

雪払い樹木医息をかけ撫づる               板坂 歩牛

春よ春旅行計画杖買はな                  建野ケイ子




                    霧野萬地郎撮影:アイルランドの風景


波集より12句

春子吹く榾木の生気吸い上げて           川島  隆

浜茹での風はさみどり新昆布             宮沢 久子

春一番二番三番春本番                 蓬田 和子

長雨にうたれ日に日に青田かな            上野 和行

この坂をのぼれば春の日本海             藤丸 美生
  
江戸の世の追分石や犬ふぐり              渡辺 洋子

顔の傷舐めて出直す猫の恋               本城  清   

下萌ゆるまだ傷深き能登半島             峰村 拓三

お喋りもリハビリのうちうららなり            小林 昭子   

膝の児の婆に似ていてあたたかし            坂本きみよ

試歩そっとリハビリ室に踏む春日            清水 茂代   

伽羅の香を聞き比べてや初音聴く            村山 絢子
 






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