「波」誌2023年4月号の作品より


「卯の花月夜」より    外つ国の戦火いまだに竹の秋         山田 貴世

「貝やぐら」より     正義とふ抽象概念貝やぐら           管山 宏子


潮集同人より9句

老いながら余生を生きる枯木立  濱口たかし    春立つや昨夜の鬼が豆拾う      由田 欣一

              一村の炉を継ぐ鍛冶屋春一番    加茂 一行

仏飯を雀に撒ける良寛忌      稲吉  豊    しゃぼん玉大好き風の見ゆるから  伊藤美也子

               若草や大の字になり追ひし雲     石井  眞

戦争の寒さに耐へてゐる地球   鎌田紀三男    城山も古墳の丘も春霞        飯野 深草

              満ち満ちて小川足早雪解水      西室  登



  冨山撮影:     原爆ドーム と 戦前のプロペラ機模型(呉市 大和ミュージアム)


灘集同人より12句

江ノ電を和田塚で降り夕笹子    今井美恵子      漆黒の愛姫廟にある余寒     今野 勝正

                 雪ぐらし知らぬお方は雪賛美    板坂 歩牛

猫眠る江の島一丁目の余寒     関  美晴       切株に座すや冬日の只中に   永井かほる

                 初山河廃炉への道いまだ模糊    山田せつ子

鈴の音や村清め清め行く寒行僧   工藤 稲邨       数日は返書白紙のまま余寒   宮川 敏江

                 老境へ闘ひ新た冬木の芽      石渡 道子

軒氷柱煌めく刃となりにけり     堀野カヅ子       羊羹の切り口かわく二月かな  遠山 典子

                 着ぶくれか鏡に斜に立ってみる   齋藤まり江




  霧野萬地郎 撮影   ミャンマー・カックー遺跡とパオ族の民族衣装の女性


波集より12句

一の宮淑気いや増す大太鼓    大平 政弘    土はもの育む匂ひ春うらら      小笠原千代子

                  春隣戯画のうさぎの立ち歩き    宮沢 久子

一村をキャンバスにして桜かな   上野 和行    ふらここや何だか鳥になれそうな   濱田 聡子

                  探梅や途中下車して杖ついて     飯塚けいじ

老耄は笑いとばして年新た     坂本きみよ     薄氷や忘れることも年の功     蓬田 和子

                  蝋梅の陽に放つ香や溶けもせで    外川 詔子

三崎には三崎の風や春鴎     増田 浩子      つきささる光芒の先雪の山     宮本 克義

                  空青し雪の栗駒山版画めく       大場きよし






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