「波」誌2023年5月号の作品より


「涼しき灯」より     義仲寺の翁の墓や青芭蕉           山田 貴世

「立夏」より       何や有る卯年卯月の卯の時刻         管山 宏子


潮集同人より8句

梅咲くや柱状節理そこに観て    鈴木八洲彦    湖をみて首長族と端居せり     霧野萬地郎

浜豌豆波聞く時は睫毛閉じ     田邉 幸子     諍ひのあとの淋しさ春炬燵     石垣みち代

海へ向く薔薇の館の客となる    阿部千穂子     一室が声でふくらむ女正月     山下 遊児

日の彩もしぶく水車や木の芽晴   富山ゆたか     石塊の影の濃くなる弥生かな    鈴木朱鷺女




  冨山撮影:     横浜 旧柳下邸にて 武者人形兜 と  大正時代の和風住宅


灘集同人より11句

蒼穹や古墳の松の菰外す      君島 京子     もつと押せもつともつとと半仙戯   酒向  昭 

もふもふのひかりの雲や春こぼす 筒井 洋子     大槻の芽吹くを聴きつつ存へむ   清島 俊雄
                   
鳥ごゑの筒抜けてゐる春障子   菊地ゆき子     寒椿震災記憶薄れゆく        菅井 亮太

万華鏡の中に吾置く春の宵     澤村いづみ      マカロンの色から春がこぼれさう   加藤静子

鳥帰る有明の月しるくして      小林 喜代     十態の猫の寝姿春の闇        木嶋 玲子

     初燕明日香の塔を越え来たる    開米 遊子




  霧野萬地郎 撮影   ミャンマー・インレー湖にて 独特な伏せ網漁 と 首長族の仕事場にて


波集より12句

三月菜くすぐるやうに洗ひけり    宮沢 久子   川音のどこか楽しげクロッカス    濱田 聡子

流氷を呑みこむ夕日オホーツク   高谷南海絵   寂しさも心の糧や春炬燵        秦野 方利

水戸なれば春告草のあちこちに   杉下 弘之   鳥帰り寂寥となる郷の湖        今野やす子

捨て舟の底に乾きし春の泥      大谷みどり   不眠症は生きてる証春北斗      相賀むさん

春来たるやる気スイッチ押してみる 植原 房子   後戻りせぬとこころに初桜       當摩さとこ

日輪のかけらこぼれて初蝶来    工藤加代子   春愁や頁をめくる音のあと       小鳥遊 彬






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