波集より10句

貴婦人になってみたくて薔薇園へ     岡坂ゆう子

初つばめ大空へ画く無限大        上野 和行

到来の新茶は知覧黙祷す         坂本きみよ

言葉ってラムネみたいに消えてくの     帆川  透

緑さす大仏裏の晶子歌碑          峰村 拓三

小草にも根張りの強さ走り梅雨       秦野 方利

小町草愛でたる妣の節くれ手       伊藤みや子

乾物屋の婆の呼び声梅雨きざす       阿片美鶴穂

かぐはしく心灯すや朴の花          新関まつり花

梅雨寒やシュガーポットを替えてみる    三宅 善夫     

灘集同人より10句

麦の穂の高きに村の昏れにけり      永井かほる 

汐風のかよふ廊下の籐寝椅子       星野 朋子

どくだみや芭蕉止宿の地と言うも     今野 勝正

蜘蛛の囲に大黒柱なかりけり       髙橋きよ子

死の数は勲章の数春寒し          山田ツトム

軍港の錆びし鉄柵梅雨夕焼          開米 遊子


夏山へ新宿0番ホームかな         田原梨絵子

吾も季節と蜘蛛の子通る苦吟中       妹川  稔

あめんぼう老人ホームの池に湧き     新坂 雅子

舟唄の小節も揺れてさみだるる       田中 順子

「波」誌2022年8・9月号の作品より

潮集同人より9句

舞殿のしんとして薔薇匂はしむ      鈴木八洲彦  

僧院の島そそり立つ秋干潟       霧野萬地郎

庭荒れて放つたらかしのバラ咲けり    濱口たかし 

「砂」にある宇宙の神秘夏の空      吉村春風子

重力に愛されつづけ黒葡萄         由田 欣一

人前やメロンの皮の残し方        稲吉  豊

父の日に灯す会津の絵蝋燭       田中美穂子

雲あふれ梅雨の匂ひの相模湾      富山ゆたか
  

手風琴の音にマロニエのパリの旅    鎌田紀三男

「花カンナ」より     沈めゆく夕日とどめて花カンナ       山田 貴世

「金魚玉」より      声求め行く八月の父祖の墓所       管山 宏子

撮影:富山ゆたか:米沢・上杉御廟        

撮影:霧野萬地郎(モンサンミッシェルとその参道)
 

「波」のホームページ・トップへ       前月へ      次の月へ