撮影:富山ゆたか        

波集より10句

全開の蛇口に初夏の光噴く        岩倉 未央

のどけしや埴輪はなべて口開けて     川島  隆

莢豌豆もぎ故郷をたぐり寄す       渡辺 初子

若夏や光まるめし手話の指         山澤 和子

水底は満員電車蝌蚪生まる         濱田 聡子

石膏像蒼き陰あり立夏かな        草野すみれ

子蟷螂姿形は一人前           三浦 修子

鯉幟上げて故郷の家じまい        村田 和子

校庭の蛇口上向き夏きざす         宮沢 久子

「七人の侍」みたい破れ傘         當間さとこ     

灘集同人より10句

シャボン玉戦なき世をうつしけり     伊藤真理子 

渡し場の兄さん多弁葦雀         山田せつ子

照り映ゆる新樹の森の美術館       長澤 義雄

新緑に染まる吾あり峠越え        工藤 稲邨

行く春の刻ずれて鳴る古時計       坂本 満子

子供にも三人子供「こどもの日」       清島 俊雄


月山の影うつしとる植田かな       柳橋 希子

羽織るもの足して夕べや卯月来ぬ     菊地ゆき子

願わくはふらここを漕ぐごと死なむ    板坂 歩牛

銀ぶらやビル屋上に青田風         畠山 久江

「波」誌2022年7月号の作品より

撮影:霧野萬地郎(カンボジアにて)
 上:タ・プローム寺院  下:鰐の生簀船

潮集同人より9句

手を挙げるだけの挨拶春の耕      原口 海人  

世を恋へどコロナ禍やまず卯月闇    田邉 幸子

散ることの花の盛りや人もまた      加茂 一行 

仮装めく人の行き交ふ夜の秋      伊藤美也子

万緑や揺れて遠嶺動かしむ         阿部千恵子

湯の町に小町伝説残る雪         石井  眞

春コート走れば裾の翼めく        山下 遊児

在せば母百八歳やカーネーション     鈴木朱鷺女
  

誰知るや引く東雲の大鷲を       飯野 深草

「夕月夜」より      心地良き疲れや夏の夕月夜        山田 貴世

「金魚玉」より      軒先に愛の証の金魚玉          管山 宏子

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