波集より10句

老眼鏡・補聴器・マスク青き踏む      秦野 方利

春愁や喉の小骨がとれなくて      石田 啓子

馬鈴薯植う海鳴り遠くなりにけり     川島  隆

花冷えや厚きトーストしくと食む       岩倉 未央

動けずに動かずに花吹雪かな       濱田 聡子

わが影を折るきざはしや春の雲      清水 茂代

この星の先行き不安四月馬鹿       飯塚けいじ

老桜老いる力を見せつけて        蓬田 和子

人殺す正義など無し春嵐          永尾 陽子

一斉に合掌の形紫木蓮          塚越やす子     

灘集同人より10句

ビル街の寸土も住処つつみ草      西室  登 

相模野をわが庭として青き踏む      長澤 義雄

桜吹雪ロマンスカーを吸ひ込めり     酒向  昭

深吉野や竜神のごと花吹雪       野口 尚子

若草を走る嘶き日高かな        石渡 道子

梵鐘の余韻身に沁む彼岸寺        長野 保代


髪切つても桜咲いてもひとりかな     筒井 洋子

永き日や柱時計の大き捩子        今井美恵子

買ひ惑う終活ノート彼岸前        澤村いづみ

桜咲くそこに命のある限り         菅井 亮太

「波」誌2022年6月号の作品より

撮影:霧野萬地郎(アンコール遺跡にて)

潮集同人より9句

うぐいすのこゑ又のして陸奥総社    鈴木八洲彦  

死ぬ力残し愛犬青き踏む        本郷 秀子

城垣の崩れ埋めて飛花落花        荒野 桂子 

耳裏を叩いて象を御す素足       霧野萬地郎

人の世の時をゆるめて遅桜        吉村春風子

忘れゐし桜花の記憶西行忌       由田 欣一

作り手の個性のままに春を捏ね     石垣みち代

来し方の絵巻繰るかに春の雲      田中美穂子
  

あたたかや静かに閉づる読み聞かせ   富山ゆたか

「竹落葉」より      矢倉みな青水無月の闇ためて       山田 貴世

「ホモ・サピエンス」より  拉薩へゆく茶葉の道あり風薫る      管山 宏子

撮影:富山ゆたか        

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