波集から１０句

今朝富士のよく見ゆる日や雛飾る　　　　布施なみ子

余寒なほ小町通りの緋毛氈　　　　　　酒向　　昭　　

囀りの日に異に自在なる大樹　　　　　中嶋　　敦

茫茫と九十九里浜黄砂降る　　　　　　川島　　隆

春光をサラダにかけて召し上がれ　　　　山澤　和子　

啓蟄やお出掛け虫が騒ぎ出す　　　　　岡坂ゆう子

恋の猫婆の菜園踏み荒らす　　　　　　　早坂きよ子

釣果あり目張一尾の夕まずめ　　　　　　柳川　雅子

春眠や夢忘るほど夢の中　　　　　　　石田　啓子

ストレスも憤怒も空へ石鹼玉　　　　　　本城　　清　　　　　　

灘集同人より１０句

水葬と申しあげたき花筏　　　　　　　関根　曳月

戦の世コロナの世にも花は咲く　　　　妹川　　稔

大根の花老人の畑小さし　　　　　　　今井美恵子

春雲の退屈さうな昼下がり　　　　　　石堂　陽子

生きてきて自愛ばつかし茹小豆　　　　緒方　格子　

日の干潟屈めば命ひしめける　　　　　山田せつ子

ばら蒔きのままのばらつき麦青む　　　蜂谷　憲生

やはらかに試歩の足裏草萌ゆる　　　　新井　里子

桜東風五肢さながらに試歩の杖　　　　武田志摩子

花吹雪く出作り小屋の粗朶の嵩　　　　　君島　京子

潮集同人から９句

白薔薇の自意識過剰風戦ぐ　　　　　　管山　宏子　　

カウベルの忙しき音や風青し　　　　　　霧野萬地郎

新鮮なひかりを見せてつくしんぼ　　　　濱口たかし

コロナ禍を走る聖火や花は葉に　　　　　吉村春風子

火の鳥を追ふごと野犬野の火追ふ　　　久保田葵美

モーツアルトの鬘のかたち春の雲　　　　由田　欣一　

行く春や鋏を入れる免許証　　　　　　　稲吉　　豊

つぼすみれきつと秘密をかくしてる　　　伊藤美也子

石山の石に仮寝の花の屑　　　　　　　　飯野　深草