灘集同人より10句

麦笛や老いはしみじみ無為徒食     緒方 格子

昼寝して開けつ放しの暮し振り      宇賀いせを

会話なき日の一日の日永かな      菊地 慶子

身を浄む熊野古道の青しぐれ       外岡六太郎

惜別の握手は肘で鳥雲に        長野 保代 

緑さす白磁の壺の置き所         遠山 典子

本堂の日矢に現はれ春埃         千乃 里子

花は葉に一茶宿りし本行寺        野口 尚子

江の島を動かしさうな青葉潮       鈴木 基之

天城越え海を遥かに雲の峰       長澤 義雄

波集から10句

明けぬ夜はないと五体を菖蒲の湯    渡辺 初子

肩書の多き名刺や傘雨の忌        近藤  拓  

蟾鳴くや貯水池の夜を響動せり      梅木くに子

昔からこの川ここに辛夷咲く       酒向  昭

げんげ田は遠き日のもの想ふもの     塚越やす子 

適温は言葉にもあり新茶汲む       清水 茂代

コロナ禍の地球隈無く春満月       伊藤みや子

たんぽぽの絮毛の中の小宇宙      小林 昭子

柿若葉生きる力の溢れおり        三宅 善夫


打ち寄せる波にも似たり春愁い      帆川  透      

「波」誌2021年7月号の作品より

潮集同人から9句

草蛍わが胸中の火種ほど        小泉 恭子  

喪の列を通り抜けゆく白き蝶      本郷 秀子

グリーンジャケット映ゆる英樹に風薫る  荒野 桂子

百幹の竹の直情夏点前         禿河とし子

万緑の迫るヒュッテに訪ね来よ      阿部千恵子

朱印帳に平成・令和夏隣         石井  眞

ひたむきに山毛欅を上らむ春の水    富山ゆたか 

放棄田は杉菜のものよ開田碑      鎌田紀三男

夏座敷白き碁石を拾いけり       鈴木朱鷺女

石山の石に仮寝の花の屑        飯野 深草

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「夏雲雀」より     大いなる緑陰村の大やしろ     山田 貴世

「恋と花」より     暗闇にひかりの夢幻恋蛍      管山 宏子

   撮影:富山ゆたか(江の島から・睡蓮)

  撮影:霧野萬地郎(サバンナにて)