マニヤラ湖畔の木登りライオン  撮影:霧野萬地郎
         

波集から10句

この場所で生きてゆきます冬菫     岡坂ゆう子

木の芽和え女将は達者で居るのやら    櫟木  健  

三国志の群雄割拠土筆ん坊        川島  隆

手を打てば水押し上げて春の鯉      時澤 公子

猫といふやはらかきもの水温む     菊地ゆき子 

三寒四温四温へ詰まるスケジュール   坂本きみよ

土の香を起してのどか耕耘機      石塚佑伎子

水門や雪解け水の音束ね        當間さとこ 

花十里秩父音頭のトーン美し       小鳥遊 彬


春日さす窓に始まる今日一日      植原 房子      

灘集同人より10句

啓蟄や先ずは床屋にでも行こか     今野 勝正

手鏡の小さな世界山笑ふ        筒井 洋子

象さんはいつも笑顔や春の風      鈴木 基之

明日葉の勢ひ摘みたる朝かな      田端 重彦

たれかれ遠し遅日のソファに深々と    田中 順子 

百萬の梅花ふるはせ夜の地震      伊藤真理子

ペル-来し海へ総立ち花大根       髙橋きよ子

当世へ薄目ひらきて享保雛       山田せつ子

春寒を席起つごとく兄逝けり      佐野しげを

踵から踏み出す一歩草萌ゆる      山田 節子

「波」誌2021年5月号の作品より

潮集同人から9句

負け鶏をしかと抱いてよしとせる    鈴木八洲彦  

葉ざくらや旧軍港に残る門       小泉 恭子

初桜心あらたに墨を磨る         荒野 桂子

耕や共に老いたり鍬の柄よ       原口 海人

お局貌の犬と同道花莚         中野 淑子

影もまた膨らみてくる木の芽路     加茂 一行 

令和三年口を覆ひて鬼やらふ      石垣みち代

牡丹雪狙仙の猿も出湯のなか      田中美穂子

銭湯のゆの字あたりが春めきぬ     山下 遊児

撮影:富山ゆたか

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「立夏」より     実朝の海満々と立夏かな     山田 貴世