波集から10句

七草粥今年の無事を一匙に       酒向  昭

セーターを手洗ひ思ひ出し笑ひ      宮川 敏江  

鬼やらい鬼面に泣いた子が父に      か さ ね

じやばじやばと洗ふ湘南春野菜      岩倉 未央

快晴の富士の笑声春の風        朝日  操 

やはらかな風や日差しや春を手に    小笠原千代子 

蔓ばらの芽吹きや我も芽吹かねば    土谷捷三郎

忘れずに鍬研ぐ昼や春動く       佐々木照子 

佐保姫の体温放つ里の山        関  美晴


木枯や手帳は今も埋まらない      鈴木 正之
      

灘集同人より10句

鳴き声は望遠鏡の中の鷽        長澤 義雄

阿蘇五岳前に後ろに麦を踏む      田中 順子

雪もまた神の恵みと思ひつつ      工藤 稲邨

春風やスクランブルの交差点      廣田 洋一

一つ家に生活が二つ隙間風       一色千穂子 

雪きれい写メだの言うが住んでみよ   板坂 歩牛

いちはやく馬酔木咲かせて神の島    白倉 靖子

面会の叶わず水仙の香を託す      石綿 義枝

初凪やひかりに透けてしまひさう    伊藤真理子

雪降りてまた雪降りて雪降りて     菅井 亮太

「波」誌2021年4月号の作品より

潮集同人から9句

号泣の声消すシャワー寒夜かな     本郷 秀子  

青麦に穂先の力反抗期         禿河とし子

なやらひや疫鬼を祓ふ声高く      田邉 幸子

淋しらにこの道行けば冬茜       阿部千恵子

春潮や我にも二つ虚貝         石井  眞 

探梅行雲に流れのあるごとし      富山ゆたか

PCR陰性焼芋ふうと吹く        鎌田紀三男

初夢に誰一人来ぬ淋しさよ       鈴木朱鷺女

銅鐸の錆あをあをと冬深む       飯野 深草

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「亀鳴く日」より     思惟仏思惟の中なる花大根     山田 貴世

海辺のブーゲンビリア  撮影:霧野萬地郎
         

撮影:富山ゆたか