灘集同人より10句

野火走る明日への力みなぎらせ     塚本 虚舟

保健所に山羊の来てゐる小春かな    高橋きよ子

安心てふいつもの枕冴ゆる夜      石堂 陽子

雪囲ひ巻かれ山祇寝りけり       工藤 稲邨

己が枯見詰め動かぬ枯蟷螂       新井 里子 

夕空に一点光る鷹の影         長澤 義雄

里帰れ釣瓶落しにのまれるぞ       板坂 歩牛

烏瓜われに個性の色なかり       鈴木 基之

孤独じやない自由なひとり返り花    鴉田 愛子

残照に力みちくる鶏頭花        長野 保代

「波」誌2021年2月号の作品より

波集から10句

受け止むるは月のしづくや凍豆腐     當摩さとこ

小春日や畑に咲かす世事談義       中嶋  敦  

俊寛の泪の時雨鹿ケ谷          村山 絢子

見上げれば我寄せつけぬ冬の月      か さ ね

切干しはひなたの匂ひ鄙の味      永尾 陽子 

満月の雫息づくヒカリゴケ        山澤 和子 

ヒカリゴケ絶滅危惧のほの明り      山田ツトム

一握の空の静寂や雪螢         岩倉 未央

山茶花の散るは咲くため鳥遊ぶ     本城  清


野水仙の香り海まで瓜木崎       石田 啓子

      

潮集同人から9句

年新た兜太のあとに兜太なし      八重樫弘志  

わが近く狸出て去るさりげなし     鈴木八洲彦

水寒く使ひ中村哲のこと        小泉 恭子 

楽聖の威厳に冴ゆるデスマスク     荒野 桂子

大根を挙げてあいさつ畑仲間      原口 海人

垣を越え朱を灯せり実万両       田邉 幸子

白鳥のシベリア土産羽根一本      田中美穂子

消炎の陀羅尼聞こゆる涅槃寺      阿部千恵子

太陽の破片が刺さる冬の海       山下 遊児 

撮影:富山ゆたか
(鵠沼海岸:初日を浴びる青年 と 鴨の舞と水輪)
 

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「師の忌来る」より   師の忌来る白梅すでに夕ごころ      山田 貴世

撮影:霧野萬地郎
(東アフリカの優秀製造ラインの記念写真 と ラジオ工場)