灘集同人より10句

旅に聞く下り簗場の川の音     長澤 義雄

上杉を阻みし雪の降り始め     菅井 亮太

失はれし時を求めて花野行く    筒井 洋子

蒼鷹空の貴族となりにけり     関根 曳月

暁紅の漁港うごめく冬かもめ    外岡六太郎 

犍陀多は吾や蓮の池澄めり     山田せつ子

裏返る亀戻しやる桂郎忌       髙橋きよ子

遠富士に枕詞のような雪      寺田 篤弘

しばらくは呆けたるかにもみづれる 君島 京子

齢人に借りたる智恵や豊の秋    澤村いづみ

「波」誌2021年1月号の作品より

波集から10句

さもなきを書き足す日記つづれさせ   菊地ゆき子

鰡跳ねる九十九里港夕まずめ      川島  隆  

じっくりと酔わせて柿の渋を抜く     坂本きみよ

直球の会話も楽し芋煮会        杉原寿美子

柿噛みて渋さはりつく夜半の雨     時澤 公子 

マスクせし君の女優に見ゆ不思議    相賀むさん 

立冬やカップ麺から湯の溢れ      酒向  昭

長き夜はアガサ・クリスティと探偵す   柳川 雅子

経納む薬師寺の天高かかりし      布施なみ子


鳥も来てステイホームや柚子日和    三宅 善夫

      

潮集同人から9句

子育てを了へて独り身返り花      本郷 秀子  

短日の闇を欺く街灯          禿河とし子

懐かしき唄とはなりぬ落葉焚き     田邉 幸子 

寒夕焼活断層は星の疵         加茂 一行

鳥声の間多くなりて昼の虫        石井  眞

雁渡る夕富士といふ道標        富山ゆたか

来し方の浮沈の軌跡大花野       鎌田紀三男

朝虹をくぐりてきたる雁の棹      鈴木朱鷺女

秋天へ風姿ととのふ多宝塔       飯野 深草 

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「島の春」より   鳶笛の高みより降る島の春      山田 貴世

撮影:霧野萬地郎
(東アフリカ鉄道とビクトリア湖畔)         

撮影:富山ゆたか
(鵠沼海岸夕景と江ノ島神社奥津宮・八方睨みの亀)