波集から10句
イクメンのかざす日傘や乳母車 廣田 洋一
初採りすキャベツのしづく零しつつ 菊地ゆき子
銀食器を磨く一日や梅雨に入る 岩倉 未央
農に無き不要不急や青田道 川島 隆
父に日や止まりしままの腕時計 酒向 昭
波のいたぶる鳩の骸や梅雨に入る 坂本きみよ
葉桜の風よ匂ひよ人恋し 布施なみ子
揺り椅子に掛け万緑を動かしむ 時澤 公子
軽鳬の子の離るる殿なほ水脈に 中嶋 敦
筍の気まま青空駐車場 宮川 敏江
灘集同人より9句
放たれて児はすぐ蟻の研究者 鎌田紀三男
心太には青竹の箸一本 今野 勝正
非常時と言ふも日常蚕豆剥く 田原梨絵子
眼光を消し水飲む猫や夏の夕 澤村いづみ
若竹に貫く空のありにけり 寺田 篤弘
青空の匂ふ実梅を捥ぎにけり 坂本 満子
瞑想に入りきて真夜のほととぎす 鈴木朱鷺女
今日だけの白を尽せり夏椿 新井 里子
不動明王のぎらり玉眼夏日来る 野口 尚子
「波」誌2020年8/9月号の作品より
潮集同人から8句
コロナ禍のさなかぞ亀よ鳴きくれよ 鈴木八洲彦
「三密」を諾ひ独り冷酒酌む 吉村春風子
春愁の机上にひらく世界地図 久保田葵美
粽食ひ日毎へりゆく月日かな 由田 欣一
昨日まであつた補助輪風薫る 稲吉 豊
通し鴨デコイの如く湖に在り 石垣みち代
青池の青のからくり梅雨青し 田中美穂子
曲がらずによくぞここまで立葵 石井 眞
撮影:富山ゆたか
「虚貝」より 潮鳴りの島に鳥呼ぶ海桐の実 山田 貴世
撮影:霧野萬地郎(豪州南岸の南極海)