波集から10句

恋の猫あとへは引かぬ写楽の目     坂本きみよ

春なかば獺郷に無き獺祭魚       近藤  拓  

ステイホーム!番のででむし幹を這ふ   清島 俊雄

安曇野の山葵畑の水車かな        峰村 拓三

笑ひ声聞こえさうなるアマリリス     渡辺 洋子 

若葉して峰の稜線押し上げぬ       土谷捷三郎

山葵田に山ガールの声天城越え      柳川 雅子

閉店の文字の重さよ春深し        三浦 修子


新緑に噎せる身のありまだ若し      伊藤 民雄

孑孑のぼうぼうふらりと遊ぶかな     粋  狂子

      

灘集同人より9句

風薫る女教師は男前         星野 朋子

パンを焼く香麻布十番聖五月     外岡六太郎

妻遺品匂い袋に「永久の薔薇」    半田味加棒

櫻かくし岸辺のラストシーンめく    山田せつ子

立夏はや遠流に似たりこの家居    今井美恵子 

篠竹に飛箭の器量夏きざす      鎌田紀三男

永き日や渋谷の地下のラビリンス   加藤 静子

硝子戸の影絵の守宮長考中      塚本 虚舟

ふあふあのオムレツににそふ春うれひ 石堂 陽子

「波」誌2020年7月号の作品より

潮集同人から8句

駅前の放射路集め薔薇盛り       荒野 桂子  

晩涼やガス灯点るパブの街       霧野萬地郎

まだ水の青さを知らず蝌蚪生る     濱口たかし 

種袋の期限確かむ虫眼鏡         原口 海人

三密を避くる暮しや夏めきぬ       田中美穂子

したたかに銀座に巣立つ燕の子      加茂 一行

日傘くるり生命線は右カーブ       伊藤美也子

桜餅われは葉っぱを食べない派      山下 遊児 

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「朴一花」より   大仏の涼しき鼻梁拝しけり     山田 貴世

撮影:霧野萬地郎(南半球オーストラリアの首都キャンベラの桜)

撮影:富山ゆたか