灘集同人より9句
早世の父になかりし日向ぼこ 鈴木朱鷺女
鉛筆の芯を尖らす開戦日 鎌田紀三男
小春日や群鶏図より二羽三羽 亀倉美知子
社会鍋グッチの財布より小銭 髙橋きよ子
冬麗や伊根の船屋の澪標 井上美沙子
埋み火や廃炉にかかる幾世代 山田せつ子
湯豆腐やたがひに老いを口にせず 阿部 竹子
山伏の羽黒秘湯や冬ぬくし 木嶋 玲子
山茶花やひと日の雨の重きこと 石堂 陽子
「波」誌2020年2月号の作品より
「春時雨」より 寺町や追いつ追われつ恋の猫 山田 貴世
撮影:富山ゆたか
撮影:霧野萬地郎(パキスタン・カラコルム街道沿いのデコバス)
潮集同人から8句
髭剃つて何故かもどかし寒の入り 鈴木八洲彦
冬ざるる樹皮削がれたるコルクの木 荒野 桂子
海の紺貰ひて松は色変へず 吉村春風子
噴き募る十二月八日の桜島 松永弥三郎
まだ狭庭賑わしてをり乱れ菊 久保田葵美
ぼたん鍋長押に並ぶ感謝状 稲吉 豊
屋根ごとに冬日を睨むシーサー像 田中美穂子
雪来るか闇にとけこむ占ひ師 伊藤美也子
波集から10句
ラ・フランスずしりと子規の頭かな 坂本きよみ
冬ざれの雨が窓打つ一葉忌 信乃 美萩
灘のよき會津なほよし今年酒 伊藤 民雄
日を天に放ち耀ふ芒原 外川 詔子
着ぶくれて銀座に遠く住み古りぬ 布施なみ子
雑踏の中まで冬が入り込む 秦野 方利
風神の喉を涸らして虎落笛 渡辺 初子
大けやき裸木なれど雄々しかり 土谷捷三郎
捨ててこそ太陽燦燦枯木立 栗林多恵子
からすうり熱き思いのまま枯るる 菅谷 睦