灘集同人より9句

鏡餅飾り父の座定まれり       寺田 篤弘

寒林の一木となり影を足す      鎌田紀三男

傷深き大公孫樹に礼年初め      今井美恵子

出逢ひしも訣れしも駅春の雪     緒方 格子

冬夕焼映る水面は万華鏡       富山ゆたか 

生国の名もなき山河初御空       田中 順子

初晴や噴煙ますぐ桜島        千乃 里子

出羽山河きりりと晴れる大旦      小室 靜子

春祭故郷のなまり聞きに行く      宇賀いせを

波集から9句

暁の森玲瓏として寒鴉         小笠原千代子

独りとは風を聴くこと枯木道       清島 俊雄  

日向ぼこ生死の境このあたり      山田ツトム

水仙を活けて居住まい正しけり      梅木くに子

若菜摘む水面の光ゆらしつつ       朝日  操

粉雪の朝牛たち出荷さる         菅井 亮太

帰るべき故郷もなし寝正月        近藤  拓


信仰心あやふやなれど初詣       飯塚けいじ

房総や瓦礫の浜に野水仙         本城  清

      

「波」誌2020年3月号の作品より

潮集同人から8句

形見なる薩摩切子に年酒受く      朝広 純子  

こんなにもシンプル海鼠の腸       本郷 秀子

人日や生死の沙汰も軽みとし      管山 宏子 

問ひたしや百寿句友の初景色      原口 海人

風花や酔眼あげてこの世佳し      由田 欣一

鍋蓋を持ち上げてゐるおでん種     禿河とし子

冬桜延命地蔵の黒き艶          石垣みち代

引き裂かれ押され列島初山河      石井  眞 

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「鰆東風」より   三月や木魚の音の弾み来る    山田 貴世

撮影:富山ゆたか 

 撮影:霧野萬地郎(フンザの郷・杏と桃の花)