灘集同人より9句

木守柿老いてもオレで押し通す    鈴木 基之

新蕎麦やひとりとなりし人とゐる   加藤 静子

残る虫耳に手屏風して聞けり     髙橋きよ子

この気まま老いて頂く賞与かも    西室  登

冬ざれの着の身着のまま仮住まひ   小山 清光 

行く秋の湿りて戻る回覧板       脇 美代子

永訣や冬の花火が見えますか     君島 京子

初髪や介護疲れを見せぬ嫂      緒方 格子

竹林をよぎる音せる時雨かな      今野 勝正

波集から10句

決壊の土手の彼方に星月夜       坂本 弘道

いわし雲無一文こそ無尽蔵       酒向  昭  

停電の六日目に入る虫の闇       川島  隆

喧嘩して仲直りしてみかん剥く      開米 遊子

富士見町ありて富士なし秋入日     植原 房子 

むく皮の不慣れと分かる吊るし柿     遠藤 章子

人恋うて三日居座る冬の蝿        小林 昭子

小春日やそろそろあの子通る頃      吉川 知子


小鳥来る洗濯物の光る午後        山澤 和子

秋耕のにわか農夫に土固し        土谷捷三郎

      

「波」誌2020年1月号の作品より

「鷹の空」より   高々と鷹の空あり言祝げり    山田 貴世

潮集同人から8句

梟に女時の顔を覗かるる       小泉 恭子  

「うまくいきました」執刀医の言天高し  中田多喜子

大花野駈けゆく夢や盲導犬      本郷 秀子 

冬でこそ土漠礫漠砂漠越え      霧野萬地郎

奥入瀬の紅葉且つ散る水となり    濱口たかし

夕されば妻恋ふ鹿の遠き声       田邉 幸子

一片の菊を浮かべて酌み交はす     阿部千恵子

吾はまだ発酵前の青葡萄        山下 遊児 

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撮影:富山ゆたか 

 撮影:霧野萬地郎(スリランカ・シギリアロック)