7日目(330日)

この日も晴れて、ホテルの窓外には朝日を浴びるカラコルム連峰がくっきりと見える。よく手入れされた庭には季節の花が咲いている。その一画に苺畑がつくられて、白い花を付けている。

宿を出て一時間ほど走って、フンザから流れたギルギット川がインダス川と合流する地点で停車する。ここはヒマラヤ山脈、カラコルム山脈とヒンズー・クシ山脈の三大山脈がぶつかる合流点でもある。何れも標高7000〜8000m級の山々が連なる世界の屋根がここで衝突して、そのエネルギーで更に標高を押し高めている。因みに「ヒンズー・クシ」はペルシャ語で「インド人殺し」の意味とか、インド人の奴隷がペルシャに抜ける際に、この険しい山中で何人も亡くなったことに由来する。

チラスの岩絵↑           シャティア―ルの岩絵と警備のポリス↑        

昼食後、はひたすらインダス川の峡谷を南下して、やがて、インダス川で最も深い峡谷で写真撮影のために停車した。その深さは3000m近くあるようで、カラコルム・ハイウェイはその中程より少し下側につくられている。7000m以上の山の雪解け水が滝となって何段も折れながら川に流れ込んでいる。世界一長い名もなき滝かも知れない。丁度、近くで電力線敷設の工事があって、1000m程先で発破の音と土煙が上がっていた。その工事現場の監督者が近づいてきて、一緒に写真に入ってほしいとの要請があった。なんでも、日本人技師が上司らしく、彼に見せたいとの事、喜んでみんなで彼のスマホ・カメラに納まった。

 険しい山肌に貼りついた曲がりくねった紐のようなカラコルム・ハイウェイをこの日も、ドライバーは沈着に運転を続け、予定を崩さず次の宿泊地のペシャムへ到着した。(走行距離は330km)

世界第9位のナンガパルバット(8126m)

チャイとトイレも終えて、一時間半ほど先のチラスの岩絵と、更に50km程南の離れたシャティア―ルの岩絵へ向かう。これらの岩絵は先史時代から10世紀頃まで長期に亘り画かれたとされる。
 旅行社の説明書によれば、「岩絵の内容は時代ごとに変化があり、動物をモチーフにしたものや、仏教をモチーフにしたもの、太陽や戦闘シーンを描いたものまで、点数は3万点を超えると推測される」とある。かつてシルクロードを使った人たちが、増水のためにインダス川を渡るのに何日も川岸で水が減るのを待っていた。そんな時間を使って河原の巨石に絵を遺したとも云われる。古い仏画は1000年以上も昔のもので、玄奘三蔵が歩んだ道筋にもあたる。いろいろとロマンを感じざるを得ない。現在、インダス川にダムの建設計画があり、多くは湖底に沈む運命にあるが、岩絵のいくつかは博物館に入ることになるらしい。

インダス川の峡谷↑ 
←カラコルム・ハイウェイのデコトラ
佛らの岩絵にそっと手がぬくむ 

  悟空らも画きし岩絵か雪解峪
春の闇はや段畑へV字峡 

   山笑う飾り尽したトラック来

最高級のギルギットのホテル↑ 
     ↓三大山脈合流点

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石塀で囲む平和や花いちご 

  無患子の花や州境検問所 

    地溝帯ぶつかる隙間雪解川

 次に今回の旅では最高峰となるナンガパルバット(8126m)を正面に見ながらのチャイの時間があった。普段は雲に隠れて、姿は中々見る事が出来ないと云うが、この日はヒマラヤ山脈の西端となるこの世界第9位の高峰がくっきりと見えた。客など誰もいないモーテルの庭に急ごしらえの場造りをしてくれた。