ここのギリシャ劇場は現存する劇場では最大級の規模と美しさだったが、16世紀に観客席の上部をスペインへ建材として持ち去られた。オリジナルの劇場では海風に乗って舞台の科白が観客席まで行き渡る構造になっていた、との地元ガイドの話。

車で少し移動して、シラクーサの町の中心であるオルティジア島に移動し、白い家壁で中世やバロックの面影を残す生活都市の島内へ入る。最初にアポロ神殿跡を街の真ん中に見る。1930年代の都市整備で、一帯を取り除いた下に現れた廃墟で、シチリア最古のドーリス式神殿遺構。都市計画を変更してこの遺構を繁華街の中に残した。

次いで、18世紀建築のカテドラルに入る。中は古代のドーリス神殿をビザンチン時代にキリスト教バジリカの転用したもので、古代の神殿構造がそのまま残っている。モスクとしても使われ、幾多の崇拝の歴史がこの建物には見られる。島のはずれのアレトーサの泉は海岸縁にもかかわらず真水が湧き、パピルスが自生している。紀元前6世紀にはこの泉は書き記されている。この泉のお陰でこの町は島として要塞化できた。

午前中はこれで終わり、車に戻って、シラクーサの町を一望できるレストランで昼食になる。好天気で海と町、背後にエトナ山が霞んで見える。(写真↑)

豊かな気分の昼食後には再びオルティジア島に戻っての二時間の自由時間。たっぷりの時間を使って、海岸縁の道を歩く。イタリア語の標識が分からず迷い道もあったが、島を一周した。三連泊最後のホテルへの帰り道の車窓からは、すっかり雲が消えて、エトナ山は横に噴きだす煙の他に隠すものが何も無い。


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風薫る海をそびらに古代劇

かげろひぬ火の山裾の古戦場

<海ぎわアレトーサの泉とパピルス>

<市街地にあるアポロ神殿遺構>

<カテドラル内のドーリス神殿の石柱>

翌15日の朝は更に晴れて、宿から朝日の映えるエトナ山がくっきりと望めた。この日はギリシャ植民地の中で最重要だったシラクーサへ向う。紀元前8世紀にコリント人の植民地として建設された。その後は紀元前の地中海世界に幾多の光芒を残し、ポエニ戦争でローマに征服された。

ギリシャ時代の考古学的遺跡では石切り場、劇場、祭壇、闘技場、神殿などがある。石切り場には「ディオニュシオスの耳」とここを訪れた特異な画家カラバッチョが名付けた耳型の洞窟があり、中の音響効果が抜群に良いことで、シラクーサの王ディオニュシオス一世が、ここに政敵を監禁して彼らの内輪話から情報を得たとの言い伝えがある。紀元前4-5世紀の彼の治世下では多くの奴隷を使ってこの辺りから建造物の石材を切り出した。

<石切り場のディオニュシオスの耳>

<ギリシャ劇場は音楽会の準備中>

オリーブの花や奴隷の石切り場