7月26日(土)

 この日も終日、自由行動のゆっくりした旅程だったが、日本から事前にデンパサールとウブド文化村へのオプションツアーを予約していた。

 最初にデンパサールの中心にあるジャガッナタ寺院へ行く。バリ・ヒンズーの最高神であるサンヒャン・ウディーが祀られている。朝はお供え物(チャナン)を寺院内の神聖な場所に配り置く白い衣装の人達がゆっくりと立ち働いている。何組かの信者が中央に建つ塔(パドマサナ:宇宙を表す)へ祈りを捧げている。

プルメリア咲く七月のバリの婚

 バリ人には無宗教は許されない。ヒンズー教、仏教、キリスト教、イスラム教徒などと身分証明書に記される。ヒンズー教以外の信者は墓に埋葬される。他にも、バリ島北部ではヒンズー教が一般化する以前の風葬が行われて、頭骸骨が晒されている村もあると云う。奥が深い神々の島なのだ。かつて訪ねたアイルランドにも似ている。

 死者は火葬される。裕福な人は直ぐに葬儀を執り行なわれ、骨片を磨り潰し、椰子の殻に詰めて、海まで運び散骨される。死者は甦り赤子として生まれると輪廻転生が信じられている。だからバリ・ヒンズー教徒の墓は無いし、葬儀は明るく華やからしい。誰の生まれ変わりなのかを教えてくれる超能力者もいる。

 ひとりでの葬儀が費用的に無理な場合は合同葬儀がある。7〜8月が多いとか、それまで死者は土中に浅く埋められる。葬儀の時は近親者が掘り返して、他の死者と一緒に遺体や骨を集め火葬する。死者は何も残さずさっぱりと逝く。

 ケチャックダンスは数あるバリのダンスでも最もユニークな踊りと云う。日本から予約したオプションのプログラムには無いが、ガイドの薦めで一時間のショウを観た。猿に扮した男性による「チャッ、チャッ、チャッ」とリズミカルな合唱の中でラーマヤナの物語を取り入れた舞踊が素晴しい。これは多いに楽しんだ。
このサイトで楽しめる。舞台は違うが、ユーチューブで見つけた

 昼食をアルマ美術館の近くで済ませ、「猿の森」へ案内してくれた。野生の猿と人とがお互いに興味を抱いて遊ぶ。森林浴も兼ねてか多くの観光客が楽しんでいた。画家の工房へ連れて行ってくれた。好きな絵もあったが、買う興味が無いと明言したら、画家は案内を途中で止めた。ウブドのメインストリートを少し歩いたが、昔と違って、断捨離の世代に入った為か、土産的民芸品には興味が湧かない。

木の暗に神々息吹く美術館

 19世紀末から20世紀初頭にかけてオランダはバリ全土征服を目指していた。この際、バリの王侯貴族らが無抵抗の大量自決を行った事に対して、オランダは国際的な非難を浴びた。その事もあって、オランダは植民地政策としてバリの伝統文化の保全を打ち出す。これを追い風に「最後の楽園」のイメージが欧米に広まった。1930年代にはここウブドの領主の招待された欧米人などがバリの伝統文化を磨き上げたと云う。ゴーギャンのタヒチへの同様な憧れをここバリに持つ文化人が多くなったのだ。

少女指す飾り誇らし祭の日

草刈りは常ぞ棚田の三期作

<ウブド村のアルマ美術館入口>

<朝のジャガッナタ寺院>

散骨や夏涛はじけるサンゴ礁

 デンパサールから北へ40キロほどのウブド文化村へ向かう。ここは芸能と芸術の中心地としてバリ文化の多様性が見える人気のスポットだ。

 ならばとウブド周辺の棚田(ライステラス)の景が見える丘に行く。見事な棚田だ。三毛作の田は刈り入れが終わって、色彩的にはいま一つだった。道路脇の駐車スペースをやっと見つけて、ほんの少しの時間を眺めて、人波から逃れた。

<ライス・テラス>

<市場内の売場とガイドのムリチャンさん>

<好きになった1930年頃の作品>

 因みに、ガイドの説明によれば、バリ島にはカースト制がゆるい形で残っている、同じ階層の結婚が望ましいが、違う場合は、花嫁は新郎の階級に変わる。それを嫌がる場合もある。また、子供は二人までしか産めない。40歳のガイドのムリチャナ氏は男と女の子をそれぞれ一人づつの子宝に恵まれた由、家庭は親、兄弟、子供たちと一緒の敷地内に住み、長兄が神事を取り仕切って、方位や石像の配置などや祭事など、バリ・ヒンズーの伝統を守っているとか、、、。

<市場前の神への供物>

 ここで、結婚写真を撮っている2組に出会った。式前に写真を撮るとか、カメラマンが注文を付けて、様々な愛の表現をさせられて微笑ましい。

<バリの結婚式>

<猿の森にて>

緑陰に坐してひたすら祈りけり

「その後のサファリ」のTOP       back              next       HOME

 市内のマーケットを案内される。市場には猥雑の中に、その土地の庶民の活力と生活の臭いがある。ここでは豊富な果物などに加えて、祭の多い島らしく、祭事に使う飾りやアイテムがうず高く積まれている。入口には腰巻きをした悪霊退治の神様の足元には多くのお供え物(チャナン)がある。

 寺院の隣のバリ博物館に入る。石器時代からの道具から今も舞踊で使われる神々の仮面などが4棟に亘って展示されて興味深い。日本の土偶と良く似た土人形、波打つように曲った名刀やバリ島の祭に登場の神々など時間をかけて見たいところだ。

火の揺れる夏車座の大合唱

 夕食はウブドのバリ風のシ―フード店で、ここでも舞踊があったが、ケチャダンスに比べてスローで印象は薄い。

<ケチャックダンス:サンヒャン・ドゥダリ ダンス>

<少女と門に豪勢な祭飾り>

邪鬼除けの神へ供物の日焼け爺

婆ひとり祭飾りの売り仕切る