724日(3日目):エジンバラ→湖水地方

スコットランドからイングランドは湖水地方のランカスターへ移動する。その国境の町、カーライル近くに古代ローマ帝国の支配した証となるハドリアヌスの城壁があるのだが、パックツアーのバスではその事に触れずに通過した。レンタカーなら必ず寄りたい場所だ。

ウィンダミア湖観光船にて

次に、湖水地方で最大の湖、ウィンダミア湖の観光船遊覧。幸いに天気は上々だ。200人で満員の船が南北に細長い湖を9キロ程南下する。屋根はあるが仕切りや窓もなく風が実に心地よい。乗客は夏休みを利用しての海外からの観光客が多いようだ。湖でヨットを楽しむ人も多い。東西の幅は狭いので、左右にはゆったりとした北国の夏景色が眺められる。

ワーズワースの家と庭

昼食までのバスの窓外には牧草地帯が緩やかな丘を覆っている。羊の群も時折遠くに眺められる。牛や馬は稀にしか見ない。かつてケルト人が囲いこんだ積み石もあらわれる。

バスの休憩所に置かれた農器具など

キャンプ車の連なる湖畔の道忙し

船を降りると、蒸気機関車が待っている。ハーバーズウェスト鉄道だ。観光用として再登場らしいが、機関車トーマスを売りにしているこの国の目指す観光振興の一端が見える。

次は日本でも子供に人気のピーター・ラビットの絵本作家、ビクトリア・ポターの博物館へ入る。動物たちの物語が再現されている。ヴィクトリア時代の裕福な家庭に生まれ、メイドや家庭教師に育てられた少女は他の子供達と遊ぶ事なく、身近な小動物に興味を抱き、そんな観察から、兎の目線に立った絵本『ピーター・ラビットのおはなし』を著したと云う。当初は出版に苦労したが、一たび出版されると作品は好評で、その売り上げから得た収入は、この湖水地方から始まったナショナル・トラスト運動に大いに寄与した。

ナショナル・トラストは1895年に発足した民間非営利団体で、英国内の歴史的建造物や庭園や自然などを守る活動で、この湖水地帯には多くの建物や自然はナショナル・トラストの管理下に置かれている。ビクトリア・ポターは湖水地方の土地を買い取り、その全てを当時のままで維持すると云う条件でナショナル・トラストに託した。15の農場と16キロ平米が100年以上の時を経た今も当時と変っていない。

湖水地方を走るのSL

 昼食後、湖水地方の小さな村、グラスミアでの観光は18世紀の詩人ワーズワースの過した邸宅から始まる。家は所縁の博物館となって、またグラスミア湖も眺められる広い庭園を巡ることが出来る。
 ロマン派詩人がその詩魂を揺さぶられたカッコウの森を歩いた。野バラや紫陽花、知らない名前の花が手入れも良いのだが、それでいて自然に咲いている。いわゆるイングリッシュ・ガーデンの原型的存在なのかも知れない。

ビクトリア・ポターの博物館にて

地ビールは黒よシルキー泡白し

SLの煤を額に避暑の客

 降車駅で待っていたバス乗って、そのまま宿のホリデイ・イン・ランカスターへ到着。ポーク料理だったが、決して美味くない。アイルランドのギネスの黒ビールが唯一の救いだ。

羊歯茂るピーターラビット駈けし森

病葉のジャパン・カエデもありにけり

青葉して詩人の愛でし湖畔かな

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