オビドスは小高い丘に14世紀の城壁で囲まれた細長い三角形の小さな町で、数本の狭い石畳の道と店や家、教会、広場が小じんまりとまとまっている。六代目の王ディニスが后を迎えた時に贈った町と云われる。以降、1883年まで王妃の直轄地として代々の妃に受け継がれた。いかめしい城壁には囲まれているが、家々は花で飾られ、いかにも妃の町らしい優美な雰囲気を醸し出している。
町の入口から最も奥まった所に聳え、かつての王妃の居城を改装したポサーダがこの日の宿だ。たった九室しかない。当初の日程では予約が出来なかったが、日程変更してこの日の宿泊を予約して貰った。我々の部屋は城の一角にある四角い塔で、二階が寝室、一階は浴室になって、その間は急こう配の狭い階段を踏み外さない様に綱を辿って上り下りする。一階に窓はなく、二階の窓はかつての細い銃眼を利用した光取りが三面にあるだけで、中世の風情が漂う。
このポサーダの夕食は評判が高いと聞き、事前に予約を取っておいた。
席は城壁に落ちる夕日が望める唯一の出窓のような場所だった。
ここからの落日を楽しみ、極上の味と、気の利いたシェフや給仕のサービスも加わり、愉快な時間を過ごした。
明るいので、早速に宿の城を出て、町を囲む城壁の上へ登り、細い石の道を歩く。高さがあるので、なかなかスリルもあるが、城下町全体を眺められ、また城外の葡萄畑や広大な青野を見ながら贅沢な時間を過ごした。下に降りてアズレージョで飾られた門や、教会、軒を接する赤煉瓦の家に白壁と植栽などが見事な美しさを作っている。地元特産のサクランボ酒やコルク製品など、興味ありそうな店にも入ってショッピングなどを楽しんだ。
<寝室の飾り>
<城壁の外は葡萄畑>
<城壁と町の俯瞰>
<宿泊したオビドスのポサーダ>
<サンタ・マリア教会とペロリーニョ(見せしめの塔)>
<楽しい会話をしながらの見事な料理人>
<極上な一品!>
<ポサーダ・ド・カステロの出窓席からの夕日>
<城壁内のメイン通りと路地が美しい>
すれ違う城壁せまし岩スミレ 行く春や物見の塔の猫二匹
この町は王妃直轄バラ赤し 城壁を赤き薔薇這う遺産都市
リラ冷えや銃眼のある部屋泊り 夕焼けて王晩餐の出窓席
鉄化面を四月の闇に幽閉す