我々のホテル・キンバリーは九龍の尖沙咀(チムチャツォイ)の繁華街のほぼ中央にあった。中級クラスだが至便。部屋に荷物を置いて早速に街へでる。
直ぐ近くにミラマー・ホテルがあった。家内は1970年代にタンザニアへ家族赴任するために、二歳の長男とここで一泊した。私もタンザニアからの日本出張の時にトランジットで宿泊したことがあった。当時のホテルの面影は全く無く、大きく近代的なビルになっていたが、近くの坂にイメージは少し繋がった。

ネイザン・ロードから南へ歩く。20世紀初頭に、この道路を敷いた総督ネイザン卿の名前に因んでその名前がある。この並木道は尖沙咀の中心で、多くの大型店が集中して、二階建てのバスが走る九龍の中央道にあたる。返還前に歩いた記憶よりは、ビルは巨大化しているように思われる。

半時間ほど歩いて、香港島を正面に見る海沿いの道へ出る。
返還前には舗装された普通の散策路だったが、今では「アベニュー・オブ・スターズ」と称され、香港映画の歴史を飾った俳優や監督など73の手形やプレートが歩道に埋め込まれている。ブルース・リーやジャッキー・チェンもあった。

(映画の主役になった気分、中国本土の観光客)

春朧返還前のホテル跡

薄型のビルに風穴山笑う

ホテルへ戻る途中で九龍公園へまわり道をしてみる。緑豊かな公園で人や喧騒に疲れを癒すには最適だ。地植された真っ赤なポインセチアや、香港の旗に染められている洋紫荊が咲いている。胸の白い雀サイズの鳥が、春を謳っている。

九龍公園からの出口には立派なモスクがある。香港に回教徒は約五万人もいる。英領時代に商売のためにやってきた人が主らしい。


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(九龍公園)

春うららパノラマを背に主役ぶる

対岸には香港島の金融街が一望され、林立するビルの景観はすばらしい。返還前からと同じブランドの巨大広告がいくつも見える。すっかり観光公園化した海沿いを一キロほど歩けば、香港的な雰囲気に気分も高まる。老舗のペニンシュラ・ホテルは新たに建てられた芸術館のビルなどで海への視界をすっかり遮られていた。穿ってみれば、英国植民地時代の象徴を中国返還後のビルで隠しているようにも取れる。

(豊かな中華の食材店)