アラブ風彫刻のムニンガ (ザンジバル・チェスト・ボックス)

ムニンガについては、エッセイでも書いたが、もともとは、手作りの家具に使われる木材の名前である。硬く、反らず、水にも虫にも強い。

このムニンガ材を使った浮かし彫りの家具が上級とされている。特に彫りが深く、シャープなノミ使いの物が最上級である。模様はザンジバル島の特産である香辛料になる丁字香(クローブ)の葉と花や奴隷の名残の鎖を配したものが多い。

タンザニアと併合したザンジバル島は1960年代まで、スルタンの統治下でもあって、この幾何的なアラビア模様を多く見ることが出来る。門扉や柱にもその浮かし彫りは施されていたが、何と云っても、ザンジバル・チェスト・ボックスがすばらしい。

1977年はエリザベス女王の戴冠25周年であった。旧英国植民地連合のコモン・ウェルスの国々はロンドンへ政府特使を送って、祝意を表した。そのときのタンザニア特使の贈り物に、この彫刻を施したチェスト・ボックスが使われた。緊急の注文が大統領府から入って、私の注文分は後回しにされたが、その彫刻師の腕の確かさが分かった。今、リビングで使っているコーヒーテーブルは彼の作品である。

実は、彼の先生格である、アラブ系のジャハール師は更に素晴らしい腕を持っていたのだが、1976年に他界してしまった。彼とは、ラジオのキャビネットを生産していたタングウッド社の社長の紹介で知り合っていたのだ。私の手にある彼の作品はチェスト・ボックス等である。

我が家の家紋(下がり藤)を配した本棚を作ることを思い立ち、日本よりその写真を取り寄せて、彼に彫ってもらった。出来てびっくり、その凹凸が正反対であった。確かに白黒だけの写真ではそんな誤解はあり得るものと、不十分な説明しかしなかった自分に反省した。
いまでも、当時のアルバムなどが、その本棚に詰まっている。
(右はその紋)

ジャハール師作のザンジバル・チェスト・ボックス(左:82x53x39cm)と座卓の表面の彫刻(右:100x60)


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