見えぬ糸吊るす枯葉のただ回る
<新宿御苑のフランス式公園>
軒高く猪吊られたる山家かな
吹き上がる木の葉それぞれ日に照りて
雪吊りの縄に灯れるLED
小春日や神籤見せ合う老夫婦
句集『縞馬』:日本のサファリ<2012年(平成24年)−8>
ドンとトン白足袋の踏む能舞台
城跡の粗き石垣散紅葉
雑踏を頭抜けおかめの福熊手
友墓へ同輩集う冬日和
十二月あんぽんたんとにらめっこ
水槽の底に歯こぼれ鮫二匹
相対の木々温室の内と外
紺碧の空をそびらに冬桜
<新宿御苑の新しい温室>
らいらく短文:タンザナイト
新しい宝石のひとつにタンザナイトがあります。1960年代にキリマンジャロの麓で発見されたこの青紫の石はティファニー社が「タンザニアの夜」と命名して、アメリカで売り出して人気を高めました。12月の誕生石として、パワーストーンとして人気が高いと聞いています。そのタンザニアに在住中、財政難の現地政府が宝石の採掘できそうな山を売り出すとの情報が入りました。現地通貨からドルや円への交換が難しい時でしたので、冗談ついでに、この山の一画を買おうかと仲間と話会いました。その後、オイルショックで話は没になりましたが、目の眩む様な話に、舞い上がった若い時期もありました。
<宮ヶ瀬ダムの電飾ツリー>
クリスマスからはみ出して地獄門
木枯しやツタンカーメンまで遥か
ハモニカのハモリ崩して咳ふたつ
革ジャンとホットパンツとハチ公と
<上野・西郷像と銀杏>
秋の蚊の吸血前に叩かれり
母が施設に入所した。今まで世話になった、通所サービスの2か所、週2回の出張で、掃除と食事の世話をしてくれた派遣会社、レンタルしていた補助器具などの全ての契約はここで解除された。ケアー・マネジャーがてきぱきと進め、そのケァマネ本人の担当からも外れた。 併せて、何年も看て貰った主治医も介護老人保健施設の医師へ移った。
痴呆症を患っている本人の意思はどうなのだろうかと、気になるところだが、一人で自宅に淋しくいるよりも、周りに仲間が居るので、心安らかな事と思う。何よりも医師や介護士など専門の人達が、いつも一緒に居てくれるのがありがたい。
これまで担った介護の世話は相当な負荷だった。通所の送り迎えや、三回の食事準備や配膳、就寝後と起床後のチェックとほう助など時間的に外せない制約が毎日続く。それらが一気に無くなって、介護家族にとって淋しさも残るが、これ以上は専門職に任せて、矢張り良かったと思う。
いずれは自分も通る道なのだ。今から何をしておこうかと考える・・・
万燈へ犇めく屋台酉の市
弱点がいつしか強み冬さくら
数え日の遠富士サーファー数知れず
数え日や帰船はためく大漁旗
<新宿・花園神社の二の酉>
去年今年鐘撞く列の中にいる
子も親も一人一打の除夜の鐘
<寝返り試みる2番目の孫娘>
長き夜や話の尽きぬ従兄弟会
歳晩やかけ声かけ足かけ値なし
アフリカの秋思か三奈のブルースか
年の瀬や嬰寝返りを試みる
画架ふたつ並ぶ黄落プラタナス
鎌倉の雨降る路地の薄紅葉
<大山・阿夫利神社より>