句集『縞馬』:日本のサファリ<2012年(平成24年)−7>
八月のらいらく短文:ゾウガメの思い出
先日、ガラパゴス諸島で唯一生き残っていたゾウガメが死にました。「孤独なジョージ」の愛称で親しまれ、他の島の雌との交配で子孫を残す事も試みられましたが失敗し、ガラパゴスゾウガメは絶滅しました。
私はインド洋のザンジバル島の沖合にある小島に集められたゾウガメと遊んだ事があります。ここには当時(一九七〇年代)三十頭程のゾウガメが集められて保護されていました。二百歳の最長老から三十歳の若亀までが小島のあちこちに居ました。大きな甲羅に大人と子供が一緒に乗っても悠々と草原を歩く様は、大人の風格すら感じる堂々たるものでした。「孤独なジョージ」の死に、ザンジバルのゾウガメを思い出しました。いずれも同種で草を食む陸亀です。
<新東京駅舎の天井>
鰡跳ねて川面の灯り崩しけり
梨園から長十郎が消え久し
直前の記憶が滑るちんちろりん
どこまでも園児の芝生天高し
禰宜忙し結婚式と七五三
玉串を巫女と捧げる七五三
秋灯し味噌が噴いてる飛騨コンロ
声さやか水天宮の女禰宜
二つ目の出噺子芋の煮転がし
宵闇の街に洩れ来る寄席囃子
竜神は留守かも江の島大花火
虚子の碑を裏から読めり返り花
海光のbヒし豆州みかん山
冬伊豆や追憶深きヨットマン
強がりは弱みのひとつ衣被
球形の山つぎつぎと穂草波
父あらば百歳の今日とろろ汁
<酒匂川の花火:MO撮影>
秋暑し上野の森の地獄門
<伊豆の大室山と冬桜>
<混み合った小田原の報徳神社>
残暑の八月も過ぎて、秋めいてくると、ゴルフや俳句吟行の予定が入ってくる。身体が動けるうちにと、古希を前後の仲間が、平日を利用して動き回る。 そんな中からの俳句です。
サーファーのたちまち転ぶ野分波
耳中は小宇宙なり冬日和
重機車の喘ぐ濃霧の箱根越え
盗人萩を愛でる皇宮警備官