句集「縞馬」:日本のサファリ<2012年(平成24年)―1>
今年は喪中の新年を迎え、お飾りや年賀状は遠慮した。家族が集まっての内輪の年越しだった。それでも、編集後記や続けているらいらく短文では新年の気分を失う訳にはいかない。
昨年末にらいらくに記載した友人のT画伯の叔母上から頂いた、戦時中の昭和18年に文芸春秋社より出た聖戦句集「陣火」の紹介文を作り、メール添付で友人に送ったところ多くの反響があった。満州に派遣された将校本田功の実に地に付いた現場の体験を、加藤楸邨に学んだ句で綴っている。
満州は遠い存在だったが、年末に満州を憧れていた上司の死や、その後に読んだ石光真清の手記・四部作も一気に読了し、かつての日本の気概を感じる所が多かった。
きび団子屋で鳴っていた懐かしの真空管ラジオ
弛みなき家族の絆年酒酌む 屠蘇一献あとはそれぞれ好み酒 駅伝へ大根振れり農大来
間道やバックミラーに雪女郎 放射能検査済みとや若菜売 オリオンの盾突き抜ける機灯かな
喧騒の遠のく離宮春近し 牡蠣白し潮入り門を堅く閉づ 寝室へそろりシベリア寒気団
身を寄せて貌も悴む猿家族 一斉に雀とびたつ大嚏 長風呂を決め込む今日の大寒波
@楽しかった事など・・・
この冬は寒い。50年振りの寒波襲来で日本海側は加えて豪雪が続いている。東京にも数度の降雪があったが、その翌朝に江戸の下町をゴルフ仲間で歩いた。隅田七福神を巡って、浅草まで開業間近なスカイツリーを眺めての歩きで、ゴルフ以上の21000歩を万歩計は示していた。
(らいらく2012年1月号)
渡仏四三年の友人の画家が、彼の故郷、藤沢のデパートで久々に個展を開きました。美人画、風景画そして花の絵画が数十点並び壮観でした。絵の対象は以前とは変らないのですが、全体的に、少し明るくそして赤の色が増えた様です。そんな印象を伝えたら、「一般に、加齢による眼の暗さから明るい絵になる画家は多い」と来日中の画家夫人(フランス人)のお話でした。日本でも洒落た老人が派手を好む風潮があるみたいですね。
久々に雪のせて来る山手線 受験生走る遅延を詫びる駅 雪搔きへご苦労さまとありがとう
七福神巡る危うさ江戸の雪 雪墜る黄檗寺の二層屋根 雪のせて喜怒哀楽の羅漢たち
真空管ラヂオのどけし団子茶屋 先頭に除雪車を立て街動く 新塔も一景雪の百草園
雪霏々と水戸藩江戸の屋敷跡 新塔が見えぬと雪の勝海舟 首吊りのありし松とや雪折れる
寒空やスカイツリーとうんこビル 春節や旗をしるべのツアー客 浅草や狭き名代の冬座敷