(沙沙貴神社)

蝋梅の艶ます雨のしずりかな          蝋梅や佐々木神社の起請文

(浄厳院)

灯の消えて信長公は春の闇

(安土城)

春泥や安土天守は礎石のみ                      みはるかす信長の夢春霞

(総見寺・三重塔)

拉致されし塔は廃れて春の雨

(鯖街道)

根開けや倒木多き杉林             雪解けの疎水たばしる鯖街道          

(明通寺)

脇佛いまは上野へ出開帳            明王の背ナは火焔ぞ雪解風

(萬徳寺)                    (若狭姫神社)

開け放つ書院の廊下雪解風           千年杉をはぐくむ神の水温む

(湖西路)

鳥帰り琵琶湖は更に広々と

(東寺の金堂・講堂・五重塔・観智院)

千年の立体曼荼羅春の闇            梅東風や扉の透けし勅使門

春寒し密教浄土に女神なし           板戸絵は伝武蔵とや竹の秋

句集『縞馬』:日本のサファリ<2018年(平成30年)−2>

相国寺は金閣寺、銀閣寺を山外塔頭にもつ臨済宗相国寺派の大本山で「京都五山」の第二位に列せられる。

最初に訪ねた相国寺・林光院は室町時代創建の塔頭で、室町幕府四代将軍・足利義持の弟である義嗣のために無窓国師を開山として創建された。当初は紀貫之の屋敷跡にあったと伝えられている。庭には「鶯宿梅」が少し咲いていた。この梅は、36枚ある花弁の色が真紅から淡紅、純白に変わるらしい。平安時代、村上天皇の命により、紀貫之の娘の屋敷梅が御所に移植されたが、「勅なればいともかしこし鶯の 宿はととはばいかがこたえん」と、別れを惜しむ娘の歌が添えられたのを見て、心打たれた村上天皇が梅を返されたという逸話で有名な名梅。その後、寺の移転とともに鶯宿梅も接ぎ木などによる代替わりを繰り返し、現在も咲き誇ると云う。

書院の襖絵は全て画家・藤井湧泉により、4年の制作期間を経て、平成29年に完成した。この公開が初めてで、以後も一般公開はしないと云う。

墓地には、幕末の「蛤御門の変」「鳥羽・伏見の戦い」で戦死した薩摩藩士が合葬されている。

相国寺の法堂(重要文化財)は豊臣秀頼が再建した日本最古の法堂建築で天井の鳴き龍は狩野光信による。堂内の然るべき場所で手を打つと、堂内に響いて龍の鳴き声となる。

相国寺・塔頭の豊光寺は豊臣秀吉の追善のために創建された。幕末時には廃仏毀釈の際に禅宗を守るべく奔走した荻野獨園(どくおん)和尚が再興した。本堂の釈迦如来像以外にも、寺宝としての山岡鉄舟の書なども特別公開されていた。

 次に訪ねた日蓮宗・妙覚寺では見事な涅槃図を見る事が出来た。狩野元信が手がけたと伝わる幅4,5m、高さ5,9mのもので、初めての公開となる。その大きさと見事さにしばし足を留めた。

 これらの京都観光協会の推薦するお寺をスタンプラリー的に歩けば、途中で、老舗の和菓子を楽しめる趣向もあって楽しめる。今回は「俵屋吉富」で一服した。

 最後に出町柳駅へ戻り近くの浄土宗・常林寺を訪ねる。ここは通称「萩の寺」として親しまれ、9月がベストシーズンらしい。本堂の阿弥陀三尊像が初公開との事。勝海舟がこの寺を定宿にしていた。

京都駅構内の湯葉料理でこの日は締めた。

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常林寺庭園

相国寺・方丈:枯山水の庭園

 3月に入り恒例になった湘南高校同窓生の関西旅行へ出かける。周到に準備された旅程の前日は昨年から、京都観光協会の「冬の旅」を巡る事とした。駅構内でパンフレットを眺め、行き先を場当たり的に決めるのも良いものだ。今年はこれまで公開のなかった秘仏や書院などを求めて、洛中エリアの以下を訪問した。それにしても、市バスの一日券で出町柳駅で下車してこれらのお寺を歩きとおしたので、その晩は些か疲れた。

相国寺・林光院 ⇒ 相国寺・方丈 ⇒ 相国寺・豊光寺 ⇒ 妙覚寺 ⇒ 常林寺

どこも、内部の写真撮影は禁止されているので、パンフレットから幾つかの写真を借用する。

<相国寺・林光院>

一木に紅白梅やめでたけれ(鶯宿梅)

雑踏に春眠の虎片目開け

 

<相国寺法堂・方丈>

鳴き龍は八方睨みぞ春の昼

 

<相国寺・豊光寺>

春耕す廃仏毀釈のうねり越え

 

<妙覚寺>

旅あらば大涅槃図の初公開             

涅槃図を前にうんちくあれこれと

壁一面吊るす仏画の初開帳                 

 

<常林寺>

勝海舟の宿の寺とや芽吹き前

東寺講堂の立体曼荼羅

翌日からは本番の修学旅行で湘友会のHPに記されている。

そこにはいくつかの句を発表したが、それ以外にも印象に深く残った記憶を句に残してみる。

斬新な京都駅

上から
パンフレット:表紙は相国寺・林光院の襖絵「虎図」
常林寺の阿弥陀三尊
妙覚寺の大涅槃図