句集「縞馬」:日本のサファリ<平成21年―5>
新松子ここはアイアン七番で
言訳は硬いグリーン赤トンボ
かくもかくもうからはらから秋の宴
片減りの下駄石庭のこぼれ萩
主峰なき八つの連山鳥渡る
秋の旅八面六臂の八ヶ岳
9月にはじめての母方の従兄弟の会に参加する。山梨の富士川沿いの山村に疎開してた時代から小学校時代の夏休みには毎年、田舎として逗留した。残念ながら、一世代前の母は参加出来なかったが、若い参加者が作ってくれた、従兄弟の会の写真アルバムを見ては懐かしんでいる。
霧ヶ峰へ一泊、伊豆の土肥へ家族旅行、俳句では、「波」の吟行で妙義山へ参加した。
嬉しかったのは、シカゴ時代に力を入れた「Freedum Link」を開発したグループが、顧客筋のアンディーの来日を機会に4人で会食した。このコンセプトは今も少し変えては新技術として紹介されている。少し先走った仲間との痛飲は愉快だ。
12月にはラオスへハロン湾へ旅行した。
蓼科高原より中部山岳
麻布にてアンディーと
賽銭に木の実も添えて野の仏
美しき読めぬ仮名文字宮屏風
臨月の象守る群れの良夜かな
落葉掃く白衣のままの理学生
ぐらぐらとピンクの象が行く枯野
鼻風邪の象の行進あとジンタ
色鳥や絵本売られる仁王門
畑一枚こんにゃく低く黄葉せり
錦絵の工女さやかに高袴
剣もつ黄金大黒うそ寒し
白昼夢黴錆カメラからフィルム
アステカの滅びの青史ミニトマト
ジョッギングはみな八拍子赤トンボ
球児らの交わす掛け声いわし雲
外野手に付かず離れず赤トンボ
試合後はみな球さがし牛膝
東大で農業博士A君の講演を聴く
富岡製糸場へ波の吟行句会
土肥の宿より駿河湾の夕日
露天湯でパールハーバー聞く寒さ
ほろ酔へば都心の月はジュリエット
木枯しや古本市のテント鳴る
冬ざれや議事堂裏の老守衛
たしかなる古き木の息冬の宿
国産みの神話の島や年流る
十六夜や舫う漁船の軋み音
良夜かな運気噴き出す島の龍
伸び縮む鰯の群の無衝突
秋高しトランプ王家の家族塔
ポスターに迷子のチワワ秋の風
琵琶抱く裸弁天月白し
一斉に沈む河馬たち空高し
柿渋は抜け熟年の同期会
手ひねりの皿に落ち着く零余子かな
木の実など拾う上がりの三ホール
金山の鯉は金色水澄めり
亡き友の壜の帆船ちちろ鳴く
コスモスや水車小屋から女唄
色変えぬ松盆栽の五百年
秋霞む水平線の混沌
花蕎麦や煙突のあるログハウス
大窓や島をひきはる秋の水脈
敬老日近くが遠くになりにけり
畦道の曲がりゆるやか曼珠沙華
稔田や対角線にとととかか
自転車の篭に団栗跳ね回る
対岸へ釣瓶落しや駿河湾