句集「縞馬」:日本のサファリ<平成21年―4>
7月22日に46年ぶりに日本の陸地で見える皆既日食があった。多くのツアーが待っていた南の島では嵐で、硫黄島へ移ったクルーザーではよく見えたとか、悲喜劇が報道された。関東でも雲の間に日蝕は見えた。
8月、松下政経塾で南極の氷でオンザロックを楽しむ。政治家だけでなく、福祉やキャスターなどを目指す元気のよい若者たち。南極観測船「ふじ」の艦長の話も迫力があった。高齢での元気さにはいつも感心させられる。
鐘の音のほか長崎は蝉時雨
緋扇もて被爆地獄をシテ舞えり
夕づつやクロマニオンの祭笛
紙魚走る航海日誌シュノップス
皆既日食出てまた戻る蚊喰鳥
南極の氷河の欠けら吐く空気
日蝕の暗さ無口な夏カラス
候補者はみな小粒ですプチトマト
雲の峰まっこと富士の小ささこと
長崎の原爆記念日に併せて新作能の「長崎の聖母」を日本人学校の生徒たちと一緒に観て、その後に句会をする楽しい場もあった。
この年の総選挙で、自民党が敗退して民主党の政権へ移行した。無血革命と同じだ。何年か経って、この政変の意義がどう位置づけられるか、期待したい。
桃太郎の討ちし鬼かも蚯蚓なく
涼風の道もありけり銀座裏
狐らの日傘回して長い列
ひまわりや先ずは走者へ牽制球
<箱根関所跡から芦ノ湖を>
<十字架のある能舞台>