波誌掲載句(2021年7月号〜12月)

7月号<フランス・トロワのにて>

   窓に日日草街は無電柱    炎天やジャンヌダルクの顕彰碑   麦秋や回転木馬に象・キリン

      白壁に木組みの粗き街は夏       西日射しステンドグラスに主の光

          夏灯し広場たちまちレストラン       灯に透けるシャンパングラスの泡涼し

     
                  トロワの街とジャンヌダルクの顕彰の教会にて

8・9月号<フランス南部 柔道家訪問>

   干し草の匂いを散らす牧場かな     青蔦や石の館の三階へ     甚平着て自選ワインの封を切る

       はにかみてマドモアゼルの浴衣かな          石庭に小さき鳥居や夜の秋

            蒲の穂や父は市長の柔道家                身を伸ばす魔物の樋や喜雨の中

     
             お招き頂いた柔道家ご夫妻とそのお宅(ここに泊まらせて頂いた


10月号<マドリッド>

    秋高し闘士らへファンファーレ     爽気満つ礼装美麗の闘牛士    秋日濃し火色へ猛る牛黒し

        防護柵へ逃げる闘士や青みかん        馬上より槍突く牛の背や秋思

            冷まじや致命の剣を背に深く            うそ寒や闘牛場の肉売場



11月号<チェコの印象>

    秋夕焼谷間の赤煉瓦      ボヘミアの街や水澄む空気澄む     街角のマリアを囲む供華の菊

        秋思ふとマリオネットの舞台裏           秋寂や街の隙間のシナゴーグ

            秋日濃しチャフラフスカの金メダル           冷まじきテロや空港大混乱

   
                       プラハの旧市街


12月号<マトリョーシカ>

   警官の外套肩で風を切る     極寒の唄は低音口つぼめ     氷結の湖畔に割れたウォッカ壜

      地吹雪や街灯消えてそれっきり       甘さ濃きロシアンティや榾明り

           冬ざれや舌を抜かれし聖寺鐘          重ね着や為政者たちのマトリョーシカ

  
                     モスクワ大学からモスクワ市を望む


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